学校の掃除を真面目にやった子、やらなかった子の将来

■ 中学の玄関掃除

姉妹ブログの構想のため自分の過去のことを考えているうちに、中学生の頃に学校の玄関掃除を担当したことを思い出しました。

小学校の頃から「真面目」と言われ、学校の掃除には人一倍熱心に取り組んできた私でしたが、今回の玄関掃除には特にやりがいを感じました。玄関は学校の顔で、来客も通る場所です。いい加減に掃除をすると、学校の体面にもかかわりかねません。私は、ちょっとした使命感のようなのを持って、熱心に玄関掃除に取り組みました。

ところが、圧倒的多数の生徒は、掃除を怠けてばかりでした。掃除を監督されていた先生は、よく私にこうおっしゃっていました。

「富重!お前はいつも真面目にやっているから、もうええ。ほうき貸せ。○○にやらせるんや!」

「○○」というのは、最も掃除を怠けていた男子生徒です。

■ 高校の玄関掃除

ありがたいことに、玄関掃除は高校に入っても任されることになりました。私はやはりちょっとした使命感のようなものをもって掃除に取り組んだのですが、例によって、私以外の生徒は班長を筆頭に全員怠けてばかり、掃除場にも顔を出さない有様でした。

あるとき、私一人だけが玄関掃除をしているところを、学校の中でも管理的な立場にある先生が見つけ、騒動になってしまいました。

■ その後の人生は

中学時代に玄関掃除を最も怠けていた○○君は、その後進学を続け、就職氷河期も乗り越えて、就職に成功したそうです。高校時代に班長であるにもかかわらず玄関掃除を放棄した男子生徒は、結婚にまで至ったそうです。就職もきっとうまくいったのでしょう。

一方、一番真面目に掃除をしていた私のその後は、ニートです。

それぞれの生徒の過去と将来は、一見すると皮肉のように思われます。しかし、中学高校で真面目に掃除をやったかどうかなど、その子が将来働いて自立できるかどうかには大して関係なく、実はこのことは皮肉でも何でもないのだろうと私は思います。ですから、「運命の皮肉」などと自分の運命を呪うとか、人の成功をねたむとか、そういうつもりもありません(でも、少しは羨ましかも…)。

私や他の人の現在がどうあれ、学校の顔とも言える玄関の掃除に携われたことは、良い思い出です。掃除が良い思い出とは、変わっていると思われるかもしれませんが。

仕事を欲しながら、職探しをしない人

米国労働省の Monthly Labor Review という雑誌?に掲載された論文を読んでいました。[1]

仕事を欲しながら、職探しをしない "hidden unemployed"(隠れた失業者)とも呼ばれる人たちについての論文です。

こうした人たちをアメリカの労働経済学者たちは "discouraged workers" と呼んできました。"discouraged" は「やる気(ここでは求職意欲)をそがれた」といった意味です。

近年その定義が見直され、新たに "marginally attached workers" というグループが定義されました。これは、仕事を欲し、仕事があれば就くことができ、過去1年に仕事を探したけれども、現在は職探しをしていない人たちのことです。

新定義では先ほどの"discouraged workers" は "marginally attached workers" の一部になり、就くことができる仕事がない、仕事を見つけることができなかった、必要な学校教育・技能・経験が欠けている、職場で何らかの差別を感じたといった理由により、仕事を欲していながら職探しをしていない人と再定義されました(1998年の論文に書かれてあったことなので、もしかしたら現在は違うかもしれません)。

論文ではそうした定義の変化と、それぞれのグループがどの程度労働力人口に近い存在であるかが分析されています。細かい分析で、面白いです。

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「仕事を欲している=職探しをしている」と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、ここでは両者は区別されています。この点は重要です。

"marginally attached workers" や "discouraged workers" は日本で言うニートに近いです。内閣府は、ニートを、就業を希望しながらも職探しをしていない「非求職型」と、そもそも就業を希望していない「非希望型」に分けていますが、[2] この分類をもとに言うと、先ほどの"marginally attached workers" や "discouraged workers" は 「非求職型」で無業の人たちということになります。

"marginally attached workers" は日本では何と訳されているのか分かりません。「縁辺労働者」という言葉ならありますが、これは似て非なるものです。

"discouraged workers" は、日本では「求職意欲喪失者」「就業意欲喪失者」「ディスカレッジドワーカー」などと訳され、「ニート」という言葉が広まる以前から、労働経済学の分野ではある程度知られていたようです。「求職意欲喪失」「就業意欲喪失」というと、本人が勤労の尊さを知らないとか、我慢や根性が足りないとか、親に甘やかされて育ったなどと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、もとの "discouraged workers" には、労働市場の問題により求職意欲をそがれてしまったというニュアンスを感じます。

[1] Monica D. Castillo, "Persons outside the labor force who want a job," Monthly Labor Review, Vol. 121, No. 7, July 1998, pp. 34-42.
[2] 内閣府「若年無業者に関する調査(中間報告)」、2005年。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/chukan.pdf
[最終アクセス2008年7月3日]

発展途上国のニート人口を求めてみる

発展途上国にはニートはいない、なぜならば働かなければ生きていけないからだ、という話をよく聞きます。しかし、それを実証した人は、少なくとも私は知りません。

とはいえ、「いない」ことを証明するのは難しいものです(「悪魔の証明」)。むしろ、途上国にニートが「いる」ことを証明する方が重要でしょう。

■ 途上国のニート人口を求めるのは困難だった

そこで、途上国の国勢調査などから、ニート人口を調べてみようと考えたわけですが、これは私にとって非常に困難な試みでした。途上国の統計資料を集めようにも、その国の言語が分かりません。多くの国では英語など複数の言語で資料が公表されてはいるのですが(英語なら何とか分かります)、それでも、言語ゆえか、それともそのお国の事情ゆえか、公表されている資料は限られています。

特に大きかったのは、年齢階級別の非労働力人口についての数字を集めることがほとんどできなかったことです。ニートは若者の問題のため、年齢階級別の数字が欲しかったのですが、ほとんど見つかりませんでした。このため、途上国のニート人口を算出することはできませんでした。

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※ このままこのエントリーを終わらせてもいいのですが、せっかくですから、無理を承知でまだ続きを書いてみます。

しかし、「ニート」に近い人たちの人口であれば算出することができました。先にもお話したとおり、ニート人口の算出に最も大きな障害となったのは、年齢階級別の非労働力人口が分からなかったことですが、全年齢階級の非労働力人口であれば分かる国がいくつかありました。

これをもとに、途上国の「ニート」(に近い)人口を求めてみます。そして、途上国のニート人口比率を日本と比較してみます。ただし、以下では少し無理なことをしています。

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世界各国の非労働力人口の分類

6月11日のエントリーの中で、非労働力人口の分類についてお話しました。今回は、非労働力人口の分類を、国別に見てみます。なお、非労働力人口とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を除いた人口です。そのうち、15〜34歳の者を「ニート」と厚生労働省は定義しています。[1]

どの国も、主に働かない、職探しをしない「理由」に基づいて、非労働力人口の分類を行っています。

■ 日本[2]

家事
通学
その他(高齢者など)⇒このうち、15〜34歳は「ニート」

※ 詳しくは、「非労働力人口の分類」をご覧下さい。

■ 台湾[3]

仕事に就く意思があり、就くこともできるが、探していない
(Intend and be available to work but not seeking)
通学中または受験のため?(後半、訳せません)
(Attending school or rebrushing to take entrance exams)
家事 (Housekeeping)
高齢者、障害者 (Old age & disable)
その他 (Others)

日本と似た分類です。日本とは異なり、高齢者や障害者を分けています。

■ インド[4]

学生 (Students)
家事 (Household duties)
扶養家族 (Dependents)
年金生活者 (Pensioners)
乞食、浮浪者など (Beggars, Vagrants etc.)
その他 (Others)

「扶養家族」「年金生活者」「乞食、浮浪者など」が日本にはない分類です。日本で言うニートやひきこもりの人の多くは、この中では「扶養家族」に当たるのでしょうか。「乞食、浮浪者など」は、途上国らしいです。

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非労働力人口の分類

これまでにもお話してきましたが、厚生労働省は、ニートを「15〜34 歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない『その他』の者」と定義し、その数を集計しています。[1] その数は2006年で62万人と発表され[2]、マスコミもこの数字を引用しています。よく「ニートが増加している」[3] と言われますが、それもこの厚労省の推計が根拠になっています。

しかし、よく考えてみると妙な定義です。これだと、重い病気や障害(障碍)で働けない人や、ボランティアに従事している人、刑務所で刑に服している人までニートに含まれてしまいます。

どうしてこのような定義になったのでしょうか。私は、これは政府統計で用いられている、非労働力人口の分類にかぎがあるのではないかと見ています。

ニート人口の集計のもととなっている「労働力調査」や「国勢調査」では、15歳以上人口は次のように分類されています。

15歳以上人口
  労働力人口
    就業者
    完全失業者
  非労働力人口
    家事
    通学
    その他(高齢者など)

このうち、「労働力人口」はニートではありません。働いている人(就業者)や、職探しをしていて、仕事があればすぐに就ける人(完全失業者)をニートに含めるのはおかしいです。ですから、そうした人たちを除いた「非労働力人口」の方を見てみましょう。

非労働力人口の分類
↑ 統計局ホームページより、「平成19年 労働力調査年報( I 基本集計)」のうち、「第15表 就業状態,農林業・非農林業,従業上の地位(非農林業雇用者については従業者規模),年齢階級別15歳以上人口」を エクセルで開いた内容の一部です。

非労働力人口は、「家事」「通学」「その他」に分類されています。

おそらく、このうち「その他」に該当する若者が最もニートに近そうで、しかもこの分類がそのまま使えそうだということで、例の定義になったのではないかと私は見ています。しかし、この定義だと、先ほどお話した通り、重い病気や障害で働けない人等がニートに含まれてしまうという問題があります。

このように、非労働力人口は「家事」「通学」「その他」に分類されているのですが、実はこれ以外にも分類がないことはないのです。ただ、この別の分類は、ニートの数を把握するには、上の分類以上に使えません。

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