メンタルヘルスへの早期介入、引きこもり予防にもつながる?

メンタルヘルスの問題の多くは、10代までに始まる


イギリスの首相は、メンタルヘルスの問題に熱心のようです。9日、メイ首相はメンタルヘルス改革のための政策を、行政機関「チャリティ委員会」で行なわれたスピーチの中で明らかにしました。

政策は、若者や子供に焦点を当てたものだそうです。例えば、全ての中等学校に、症状を特定する方法や、メンタルヘルスの問題が現れるかもしれない人を支援する方法を教える研修講座を提供するといった施策が盛り込まれています。

↓ BBC NEWS ホームページへのリンクです。
◇ Mental health reforms to focus on young people, says PM (新しいウィンドウで開く

↓ イギリス政府ホームページへのリンクです。
◇ Prime Minister unveils plans to transform mental health support (新しいウィンドウで開く

この政策の当否は私には分かりませんが、問題意識には共感します。BBC の記事にもありますが、メンタルヘルスの問題は10代までに始まる場合が多いそうです。メイ首相の政策は、治療だけでなく、予防にも目を向けているという見方もできるかもしれません。

もともとイギリスでは、メンタルヘルスに対する関心が以前から高まっていました。先代のキャメロン首相も「メンタルヘルス革命」(mental health revolution)として政策を打ち出していました。

引きこもりも、早期に介入が行なわれていれば……


メンタルヘルスの問題といえば、日本の引きこもりも無関係ではありません。引きこもりの若者の多くが、何らかの精神疾患の診断基準に該当したという調査報告もあります。

5つの精神保健福祉センターの思春期・青年期ケースについての研究もその一つです(近藤ら、2010)。本人が来談した184件のうち、情報不足により診断保留となった35件を除いた148件で精神医学的診断(DSM-IV-TRによる多軸診断)が確定、そのうちいずれの診断基準も満たさないと判断されたものは1件のみだったそうです。

支援経過中に、新たにI軸、II軸診断が追加された例はありませんでした。このため、「引きこもりが続くと精神医学的問題が生じる」といった仮説には否定的であり、精神医学的問題は引きこもりの原因となっている可能性が支持されると報告書には書かれてあります。

これらの例の中には、早いうちに手を打つことができれば、引きこもりにまでは至らずに済んだ例も多々あるかもしれないと、私などは考えてしまいます。

文献


◇ 近藤直司、清田吉和、北端裕司、黒田安計、黒澤美枝、境泉洋、富士宮秀紫、猪俣夏季、宮沢久江、宮田量治(2010)「思春期ひきこもりにおける精神医学的障害の実態把握に関する研究」 齋藤万比古『思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究』67-86。 http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do

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精神疾患をモンスターとしてキャラクター化

英国の Toby Allen さんという方が、精神疾患をモンスターとしてキャラクター化する活動を行なっていて、興味深く見ています。

例えば……

○ 社交不安 (新しいウィンドウで開く
○ PTSD (新しいウィンドウで開く
○ うつ (新しいウィンドウで開く
○ 統合失調症 (新しいウィンドウで開く

○ 場面緘黙症/選択性緘黙 (新しいウィンドウで開く) [注]

Toby Allen さんの取り組みは Daily Mail という英国の有名な大衆紙に取り上げられたことがあるのですが(電子版で確認)、そこにはこの取り組みの意図が書かれてあります(Innes, 2013)。

* 以下引用 *

「Toby Allen さんは、モンスターは精神疾患を軽んじる意図で作ったものではないと話している」
「Toby さんは、精神疾患に物理的な形を与えることにより、精神疾患をより克服可能なものに見せることを 期待している。また、精神疾患にまつわるスティグマを減らすことを期待している」

(Toby Allen says the monsters are not meant to make light of the conditions)
(He hopes that by giving them a physical form, he will make them seem more beatable - also hopes they will reduce stigma around mental illness)


* 引用終わり *

ですが、モンスター化には他の効果も期待できると私は思います。精神疾患を罹患者と切り離し、精神疾患は打ち克つべきものと認識する効果です。例えば場面緘黙症だと、緘黙を自分のアイデンティティとする人が中にはいます。それもひとつの考えでしょうが、克服しようとするのであれば、緘黙と自分を切り離して考えることも必要です。

なお、Toby Allen さん自身も、不安障害で悩まれた方です。

日本でも、「認知の歪み」をキャラクター化したものがネット上で話題になったことがあるのですが、あれを見て似た感想を持ちました。

↓ 「認知の歪み」をキャラクター化したもの。「社会不安障害と向き合う」さんの Twitter へのリンクです。
https://twitter.com/Living_With_SAD/status/433116253813604352 (新しいウィンドウで開く

[注] 場面緘黙(かんもく)症/選択性緘黙……発声器官に器質的障害がなく、言語の習得にも問題がないにもかかわらず、特定の場面で継続的に発語ができない状態のこと。

※ 場面緘黙症Journal (新しいウィンドウで開く

[文献]

◇ Innes, E. (2013, October 9). The mental illness monsters: Artist visualizes what illnesses would look like if they were mythical creatures. Mail Online. http://www.dailymail.co.uk/health/article-2449864/Artist-Toby-Allen-imagines-mental-illness-monsters.html

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子どもの精神疾患「障害」の多く→「症」について、詳細

子どもの精神疾患の「障害」という訳語の多くが「症」に変更される云々といった記事が、5月28~29日に主要紙に次々と掲載されました。(電子版で確認)。例えば、「学習障害」は「学習症」になるそうです。

↓ 一例です。Yahoo! ニュースに掲載された、読売新聞の記事。

子どもの病名、「障害」の多くを「症」に変更
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少し補足をすると、昨年、日本でも広く用いられている米国精神医学会による精神疾患の診断基準が大幅に改訂されました(DSM-5)。この診断基準は英語で書かれているため、これを日本向けにどう和訳するかが課題でした。その和訳に関するガイドラインが今般出て、「『障害』を『症』に 」などの方針が示されたのです。

* * * * * * * * * *

さて、これを報じた新聞記事を読んだ人は多いようなのですが(読売に限らず)、記事の一次資料である、 日本精神神経学会のガイドラインを直接読んだ人は少なさそうです。新聞記事はこのガイドラインのダイジェストであり、ガイドラインには、より詳しい情報が載っています。そこで、ガイドラインへのリンクを貼っておきます。

DSM-5 用語翻訳ガイドライン
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私は専門家ではなく、よく分からないのですが、今回のガイドライン公表で名称変更が確定とは必ずしも言えないのかもしれないと私は思います。 今回のものはガイドラインの「初版」です。第2版以降が出る可能性があります。また、ガイドラインにも、「(日本精神神経学会精神科病名検討)連絡会では、今後もさらに会員の意見を参考にしながら、DSM-5の病名・用語に関して検討を加えていく予定である」という記述があり、ガイドラインの内容が変更される可能性が示唆されています。

あくまで素人の感想ですが、「障害」という訳語は多義的で、ややこしいとは前から感じていました。例えば、「身体障害」という場合と、「社交不安障害」という場合とでは、「障害」の意味が違います。英語では disability とか disorder とか様々な単語で表現されるものが、日本では同じ「障害」と訳されている部分がありました。特に、disorder の訳が何とかならないかなと素人として感じていました。今回の件はその disorder の訳に関するものだったのですが、相変わらずややこしそうと感じています。和訳は難しい作業なのでしょう。

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