プライドの高さ、若者特有の万能感

『週刊ダイヤモンド』2008年3月22日号に、大学受験に失敗した娘のことを書いたある男性の文章が載っていたのですが、それを読んで、私の大学受験時代を思い出しました。

私のクラスメイトたちは、模試の際には、志望校欄に難関大学ばかりを書いていました。しかし、彼ら・彼女らの偏差値は必ずしも高くはなく(私もそうだったのですが)、模試の結果、彼ら・彼女らに返ってきたのは、D判定やE判定ばかりでした。

自身の学力を省みず難関大学の名前ばかり書く教え子達を、先生方はプライドが高いとして、さんざん馬鹿にしていました。私は、プライドだけでなく、若者特有の万能感も、クラスメイトたちをそうさせたのではないかとも思っています。自分は特別な存在であり、二流三流の大学で収まってたまるかといったところでしょうか。

結局受験が終わってみると、ほぼ全員が難関大学には合格できませんでした。「あんなに勉強したのに…どうしてこの程度の大学にしか受からなかったんだ」こういう声が、クラス中のあちこちから聞こえてきました。

私は同じクラスメイトとして、彼ら・彼女らの努力をよく見てきました。1年生の頃から大学受験を見据え、部活動にも入らず、勉強ばかりの毎日をよくぞ耐え抜いたものだと思います。

ただ、受験生は誰だっておおむねよく勉強しているものです。本人たちとしては勤勉に頑張っていたのかもしれませんが、難関大学に合格する人はそれ以上に勉強していたのかもしれません。クラスメイトが馬鹿にしていた比較的偏差値が低い大学に入学する学生も、実は彼ら・彼女らが考えていたよりも、ずっと多くの勉強量をこなしていたのかもしれません。あるいは、残念ながらこのクラスには、もともと受験勉強の素質があまりない人が多かったのかもしれません。

こうして、クラスメイトたちは、自分たちは一流大学に入れなかった、努力は簡単には報われなかったということを実感して、高校を卒業していったのでした。しかし、こうした経験は意義深いものだったのではないかと私は思います。

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ちなみに、私はクラスメイトたちとは逆に、志望校欄には自分の身の丈に合った大学ばかりを書いていました。しかし、先生は、私は身の丈どころかそれ以下の大学を志望していると見ていたようで、「どうしてお前が、こんな偏差値の低い大学志望するんだ」「こんなの、クラスではお前だけだぞ」と何度も私を注意していました。この件で、職員室に呼び出されたことまであります(私が一番情けないです)。

私はプライドが低かったのかもしれません。もしくは、若者特有の万能感がない珍しい高校生だったのかもしれません。

場面緘黙症(選択性緘黙)を知って

場面緘黙児への支援―学校で話せない子を助けるために今回は、「場面緘黙症(選択性緘黙)」についてのエントリーです。

場面緘黙症(ばめん・かんもくしょう)は、器質的障害がないにもかかわらず、特定の場面(主に幼稚園、学校)で話すことができない情緒障害です。主に幼稚園〜小学校低学年の子供がなるものですが、症状が長引くなどして青年期以降にもこの症状を持つ人もいます。

場面緘黙症が重い子の中には、学校でトイレに行くことができない子や、給食を食べることができない子もいます。また、幼稚園や学校にとどまらず、家庭でも話すことができない子もいます。

ただの内気、恥ずかしがり屋、引っ込み思案ではありません。それらの極端なものです。

場面緘黙症の原因については諸説ありますが、近年の研究では、不安障害との関連が指摘されています。

こうした子供たちに無理に声を出させようとすると、かえって緘黙症状が悪化します。そのようなことは行ってはなりません。

場面緘黙症は国際的に認知度が低いですが、アメリカやイギリスなど海外では、大手メディアが場面緘黙症を正面から取り上げる特集を組むなど、啓発活動が進んでいます。日本ではまだまだです。

詳しくは、姉妹サイト「場面緘黙症Journal」へ。

タレントは友達代わりになるのか

人とコミュニケーションをとるのが苦手なせいか、昔からなかなか友達ができません。

そんな私が、ある時期、演歌歌手(!)がディスクジョッキーを担当するラジオ番組をよく聴いていました。今からかなり前、まだ私がニート、ひきこもりになる前の頃です。

ラジオを聴いていたのは演歌・歌謡曲が好きだったからにほかならないのですが、もしかすると、演歌歌手を勝手に自分の「友達代わり」にしていたのかもしれません。

私の演歌の楽しみ方は、以前「ポピュラー音楽のイベントとひきこもり」でお話したとおりで、イベントには顔を出さず、一人自分の部屋に閉じこもって、ラジオやテレビを通じて、イベントの内容を見聞きするというものでした。

そんな私ですが、実は演歌歌手とコミュニケーションをとったことがあります。

たった一度だけ、演歌歌手のイベントに顔を出したことがあり、そのときに歌手とちょっとしたコミュニケーションがあったのでした。さらに、やはりたった一度だけ、演歌歌手のラジオ番組に投書したことがあり、幸か不幸かそれが採用されて、私が書いた文章を演歌歌手が読み上げたことがあったのでした。

そのときに感じたことは…たとえ相手がタレントであっても、やはりコミュニケーションがうまくとれないと困るという現実でした(当たり前と言えば当たり前ですね)。私は勝手に演歌歌手を友達代わり?にして、熱烈な思いを抱いていました。しかし、いざ実際にその歌手と会ったりしてみると、歌手とギクシャクしてしまったのです。相手の歌手も、困ってしまっていたかもしれません。夢の世界から、現実に引き戻されてしまったのでした。

それにしても、現実世界で友達ができない人に、勝手に友達代わりにされると、歌手はどのように感じるものなのでしょうか。

経済・生活問題で自殺した若者の数の推移

就職氷河期は、ニート、ひきこもりの増加の背景に挙げられることが多いです。ではその氷河期時代に、就職難で悩み、ニートにもひきこもりにもならずに、あるいはそれらを経験した後に、不幸にして自殺に追い込まれた若者は増えたのでしょうか。

2004年3月24日の『読売新聞』(電子版)には、「就職難で?学生の自殺増加、大学側が予防に本腰」という記事が掲載されています。

ですが、自殺統計はそれを裏付けているのだろうかと疑問に感じ、警察庁や統計局の資料に目を通していました。

■ 自殺の原因・動機

自殺者の原因・動機について統計的に把握するのは限界があります。統計上は、自殺の原因・動機は遺書をもとに判断されるのですが、遺書を残さずに自殺する人が実に多いからです(例。平成18年中は、警察庁によると、3,395名の20〜29歳の若者が自殺しましたが、このうち遺書を残したのは1,031名に過ぎませんでした)。遺書から、自殺の原因・動機がはっきりするもののみを見るほかありません。

警察庁は、自殺の原因・動機を、「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」「勤務問題」「男女問題」「学校問題」「その他」「不詳」に分類しているのですが、就職難で自殺した者はこれらのうちどれに分類されるのだろうかと悩んでしまいます。「経済・生活問題」が最も近そうなので、これに注目して見ていきます。

以下の表は、年次別の20-29歳人口、そのうちの自殺者数、そのうち遺書を残した者の総数、さらにそのうち経済・生活問題で自殺した者をまとめたものです。

表1 経済・生活問題で自殺した若者の推移(単位:人、20-29歳人口のみ万人)
年次20-29歳人口自殺者数遺書あり経済・生活問題で自殺
20011,8043,095795139
2002 1,7443,018816159
20031,6973,353886174
20041,6483,247993204
20051,5633,409976177
20061,5333,3951,071171
資料:統計局ホームページ/人口推計(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm 最終アクセス2008年4月11日)。統計(警察庁)(http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm 最終アクセス2008年4月11日より)。これらより作成。

20-29歳人口は減少傾向にあるにもかかわらず、経済・生活問題で自殺した者の数は2004年まで増加の一途をたどっています。2004年には204人に達していますが、これは2001年のおよそ1.5倍の水準です。

ただし、その数は、何十万人とも言われるニート、ひきこもりのそれに比べると、遺書を残さなかった自殺者数や年齢の幅を考慮に入れても、非常に少ないことが分かります。

■ 限界

自殺の原因・動機については、2001〜2006年までのデータしか集めることができませんでした。できれば、就職氷河期以前からのデータを集めたかったです。

また、ここで取り上げたのはあくまで「経済・生活問題で自殺」した者の数であり、就職難で自殺した者とは異なります(これが大きい…)。

■ 参考資料〜増える若者の自殺

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正規労働者と非正規労働者の賃金格差について

正規労働者と非正規労働者の賃金格差は、経済学的にはどう説明されるのだろうかとずっと疑問に思っていました。

不勉強な私は、先行研究に十分に目を通していないので、経済学者の間でどう説明されているかほとんど知りません。知っている限りのこと(学部レベルの知識)で、考えています。

○ 生産性

市場メカニズムが有効に働いていれば、賃金は生産性によって決まるというのが最も基本的な考え方ではないかと思います。生産性の高い労働は賃金が高いですが、そうでない労働の賃金はそれなりです。生産性格差が賃金格差を生みます。

「生産性を反映しない賃金差があれば、市場メカニズムによって、割安な労働力の需要が増大し格差が修正され、長期的には賃金格差は生産性の格差に収斂していく」[1] ため、長期的には、同一生産性・同一賃金が実現するはずです。

ですが、何らかの理由により市場メカニズムが有効に働いていなければ、この限りではありません。

この生産性だけで説明できない賃金格差があるのであれば、他に何かあるはずです。

○ 仕事の属性

補償賃金格差というものがあります。3K(きつい、汚い、危険」)労働はその分かりやすい例ですが、こうした負担が多い仕事は、その分賃金が高くなります。仕事の属性によって、賃金も変わってくるということです。

○ 労働組合

労働組合の力も賃金に影響を与えます。非正規労働者は正規労働者よりも労組加入率が低いという話を聞いたことがありますが、どうなのでしょうか。

○ その他

その他にも、差別など、賃金格差は様々な要因によって決まります。

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正規労働者と非正規労働者の賃金格差は、これらのうちどれによって説明できるのでしょうか。

今月7日に発表された、OECD の "Economic Survey of Japan 2008" は、「正規労働者と非正規労働者の間の生産性の差は、賃金の差よりも小さい」 ([T]he difference in productivity between regular and non-regular workers is much smaller than the wage gap) [2] と分析しています。これが一つのヒントになりそうです。


[1] 永瀬伸子「非正社員と正社員の賃金格差の納得性に関する分析」『国立女性教育会館研究紀要』Vol.7、4ページ。
[2] OECD, "Economic survey of Japan 2008",
http://www.oecd.org/document/23/
0,3343,en_2649_201185_40375191_1_1_1_1,00.html
[2008 Apr 9]

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