海外のNEET報道

海外での NEET に関する報道を、ほぼ毎日チェックしています。といっても、日本のニートが海外でどう報道されているかを調べるためではありません。海外でその国の若者の雇用問題を報じる際に NEET という言葉がどの程度使われているか、そしてそうした若者がどう報道されているかを知る手がかりを得るためです。

私は Google News で NEET と検索する方法をとっています。もしかしたら RSSやアラートを活用した方が楽かもしれませんが、好きでこうした方法をとっています。

○ Google News "neet" の検索結果
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検索結果に出てくるニュースは外国語ばかりです。私は英語ならなんとか読んでいるのですが、それ以外の言語は、Google 翻訳などの機械翻訳を用いて強引に読んでいます。ドイツ語など、インド・ヨーロッパ語族の言語は、日本語よりも英語に翻訳した方が読みやすく感じます。

もう2年は、こうして NEET に関する海外報道をチェックし続けてきましたが、ヒットするニュースは英国のものが最も多いと感じます(あいにく統計をとったわけではないのですが、そう感じています)。もともと NEET という言葉は英国で生まれたものでしたが、現在でもこの言葉は使われていることが分かります。英国で NEET というと、かつては、英国ではこの言葉はあまり知られていないとも言われていたのですが、今日これだけの頻度で英国の NEET が報じられている状況を目にすると、英国でもこの言葉の認知度は上がっているのではないかとも思えます。

ですが、英国以外の国の記事もヒットすることがあります。これは国によって偏りがあり、西欧の一部の国や、中国、韓国の記事をときどき見ることがあると感じているのですが、これまた統計をとったわけではなく、私の実感にすぎません。なお、米国の NEET に関する記事は、見た覚えがありません。

ニュースのうち、特に気になったものについては twitter に投稿し、そのログを twilog というサイトで残しています。twilog の私のページを NEET と検索すると関連投稿がヒットします(一部、ニュースとは無関係なものもヒットします)。

○ twilog・私のページを NEET と検索
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外国の NEET 報道を見る際に注意すべきは、海外でいう NEET と日本でいうニートとは意味がしばしば異なることです。海外で NEET というと、Not in Education, Employment or Training の言葉通り、就学、就労、職業訓練いずれの状態にない若者を指すことが多いです。この定義に従うと、例えば職探しをしている若者でも、就学、就労、職業訓練のいずれもしていなければ NEET です。

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英ニート暴徒化の報道について

ロンドンの暴動について、MSN産経ニュースなどで、「ニート」の若者が暴徒化したなどという報道がなされました。私の周辺にもこのニュースについて語った人がいて、意外によく知られていると感じています。

ただ、誤解もあるようです。「ニート」といっても、イギリスで言うところの NEET と、日本で言うところのニートとは意味が違います。大きな違いの一つは、イギリスの NEET は、職探しをしている失業中の若者も含まれることです。今回の暴動が本当に「ニート」が暴徒化したものかどうかは私には分かりませんが、このあたりのところが気になったので、少し書いてみます。

■ イギリスで言う NEET の意味

イギリスの NEET は、Not in Education, Employment or Training の略で、文字通り、教育、雇用、職業訓練、いずれにもない若者のことを指します。[注1]特に、義務教育修了後の16~18歳の若者をもともとは指したのですが、もう少し年齢層を広くとって、16~24歳にすることもあります。

■ 日本で言うニートの意味

日本のニートという言葉は、イギリスの NEET からとったものです。ただ、意味が多少違います。

まず第一に、日本の場合、「教育、雇用、職業訓練、いずれも受けていない」という要件に加えて、「職探しをしていない」という要件が新たに加わる点です。このため、完全失業者、つまり仕事を探しているいわゆる失業者は、ニートとは区別されます。第二に、日本の場合、年齢層をさらに広くとって、16~34歳に限定していることです。第三に、家事従事者を除外している点です。年齢層を幅広くとっているため、特に専業主婦・主夫を区別するねらいからだろうと思います。

日本で言うニートは様々な意味で使われることがありますが、このあたりのところはほぼ共通しています。[注2]

■ 産経などの報道が言う「ニート」は、イギリス版 "NEET" のことでは

例の報道の場合、

「『ニート』という言葉は99年、英政府報告書で初めて使われた。就学も就業もせず、職業訓練も受けない若者を指す。英教育省によると、昨年第4四半期のニートは16~24歳人口の15.6%。2007年同期の13.1%から急増した。金融・経済危機の後遺症で英国では景気が低迷し、あるシンクタンクは今後5年間で同世代の失業者は120万人になると予測する」(木村, 2011)

という記述などから、ここで言う「ニート」は、イギリス版 NEET のことと窺われます。つまり、仕事を探している失業者も含まれるわけです。ところが、上記のような日英の意味の違いなど知る人は少ないですから、これは誤解をする人が出ても不思議ではありません。

イギリスの NEET と日本のニートでは発生の背景も違うので、ごっちゃにはしない方がよいと思います。

[注1] 初出は、1999年の英政府報告書 Bridging the Gap: New Opportunities for 16-18 years olds not in education, employment or training。ブレア政権当時の労働政策から生まれた言葉です。

[注2] ニートの代表的な定義としては、厚労省「労働経済の分析」に毎年見える、「15~34歳の非労働力人口 のうち、家事も通学もしていない者」というものがあります。非労働力人口は、15歳以上人口のうち、就業者でもなく、完全失業者(仕事に就いておらず、仕事があればすぐに就くことができ、仕事を探す活動をしていた者)でもないものです。

[文献]

◇ 木村正人(2011年8月9日)「ニートの若者暴徒化 過当競争・景気低迷…根深い病巣」『MSN産経ニュース』http://sankei.jp.msn.com/world/news/110809/erp11080921200011-n1.htm

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NEET支援の費用対効果(英)

NEET という言葉が生まれたイギリスで、今月、会計検査院(Audit Commission)が Against the odds - re-engaging young people in education, employment or training - と題する、NEET支援 に関する報告書を公表しました。

報告の概要は、BBCThe GuardianDaily Telegraph などいくつかのメディアで報じられました(ただし、電子版で確認)。16-18歳の若者の4人に1人は、2年間のいずれかの時点でNEETを経験するといったショッキングな書き方がされています。

※ イギリスで言う NEET と日本のニートは意味が異なります。イギリスで言う NEET とは、字義通り、教育、雇用、職業訓練、いずれにもない(Not in Education, Employment or Training)状態の若者のことを指します。このため、日本ではニートに含まれない職探しをしている完全失業者も NEET に含まれます。また、年齢層も16-18歳と(19歳を含むこともあり)、日本の15-34歳に比べると低い年齢層を対象にしています。

報告書を読んで驚いたのが、NEET の若者を支援することによる費用対効果が具体的に検討されていたことです。NEET の若者の存在が政府の財政上いくらのコストになり、そして、そうした若者に政府として介入を行うことによりどれだけのコストを削減できるかといったことが、具体的な金額として明示されています。これは、会計検査院の報告書だからこそなのでしょうか。

イギリスは緊縮財政や付加価値税増税など財政再建に力を入れていますが、そうした中 NEET 支援を行うことにより財政コストはむしろ減るのだという報告書の主張をそのまま受け取ると、財政難だからこそ、むしろ NEET 支援は行うべきなのだろうかと思えてきます。

セーフティーネットや福祉といった問題は、必ずしも費用対効果だけでその必要性を論じることはできないかもしれません。ただ、公的な NEET支援の必要性を「困っている若者には手を差し伸べるべき」と理念で主張されるよりも、こうした費用対効果の試算を示された方が説得力があるとは思います。それも財政難の時期なら、なおさらです。

ただ、この報告書の試算が妥当なものかどうかは、私には判断できません。

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