英国ニューディール政策~若者向けニューディール編(2・完)

毎週金曜日は、イギリスNEETのお話をしています。今回は、イギリスの失業者対策ニューディール(特に若者向け)のお話の続きです。前回の記事はこちら。

[目次]

■ 若者向けニューディールは効果があったのですか
★ 労働党の自画自賛
★ 会計検査院の厳しい評価
★ 権威あるシンクタンクも厳しい評価
★ 就職した多くは白人
■ ニューディールの背景
★ 第1の道
★ 第2の道
★ 第3の道
■ むすび * * * * * * * * * *

■ 若者向けニューディールは効果があったのですか

これについては、いろいろな意見があります。ニューディールが実施された間、確かに若者の失業率は下がりました。英国産業連盟(Confederation of British Industry)や労働組合会議(Trades Union Congress)など、労使双方から高い評価を受けています。

しかし、この時期には実は景気も拡大しているので、失業率が下がったのはニューディールよりもむしろ、それとも景気拡大によるものだとする向きもあります。

いったい、どちらなのでしょうか?

★ 労働党の自画自賛

政策を立案・実行した労働党は、当然、自画自賛しています。最新のウェブサイトの情報によりますと、ニューディールにより、若者の失業率が75%以上下がって、518,000人以上の若者が職に就いたそうです。

同党は1997年の総選挙で「25万人の若年失業者の就職の実現」を公約に掲げていたので、上の数字を見る限り公約を果たしたことになります。

★ 会計検査院の厳しい評価

一方、会計検査院(National Audit Office)は少し厳しい評価を与えています。

2002年の報告書によりますと、2001年10月までに339,000人を少なくとも一定期間就労させることに成功したと推計されています。しかし、この間、景気拡大により労働市場が好転したので、その分を差し引くと、ニューディールで減少した失業者数はわずか25,000~45,000人、増加した就業者数は8,000~20,000人となっています。

このほか、若者向けニューディールの対象でない年齢層の雇用も10,000人増加し、国民所得は少なくとも年間20億ポンド(約4,000億円)増加したと推計されています。

政府は若者向けニューディールに年間14億ポンド(約2,800億円)投入しました。ここで費用対効果について考えると、イギリス国民(若者以外も含む)1人を雇用させるのに、年間5,000~8,000ポンド(約100万~160万円)費やした計算になります。

★ 権威あるシンクタンクも厳しい評価

さらに、イギリスでも権威があるシンクタンク、経済社会研究所(National Institute of Economic and Research)の評価も厳しいです。

同研究所による2001年の推計によると、ニューディールによる減少した若者の失業者数は、最初の2年間でおよそ35,000人、増加した仕事の数はおよそ15,000人です。

★ 就職した多くは白人

労働組合会議は、2004年に、若者向けニューディールの政策評価を人種別に見たユニークな報告をまとめました。

それによりますと、ニューディールで継続的な職に就いたのは、白人の割合が多くなっています。もともと比較的失業率が高いのは白人以外の人種的マイノリティーなのですが、彼ら・彼女らの雇用の増加分は、白人のそれの4分の3にすぎませんでした。

■ ニューディールの背景

ニューディールは、労働党ブレア政権の「第3の道」路線のもと、行われました。

★ 第1の道

「ゆりかごから墓場まで」(from the cradle to the grave)と呼ばれる、手厚い福祉政策。しかし、これで財政負担が膨張、経済活力は低下し、「英国病」(British disease/English disease)に。

★ 第2の道

サッチャリズム。つまり、政府の規模を小さくし、手厚い福祉政策をやめ、市場原理を生かす。今の小泉改革はこれを真似たものと言っても言いすぎではありません。これにより英国病は払拭。しかし、所得格差の拡大と失業率の増加を招く。

★ 第3の道

市場原理を生かしつつ、政府は条件整備を行い、機会の均等を確保する。その柱の一つが「福祉から就労へ(Welfare to Work)」プログラムであり、今回ご紹介したニューディール政策。

■ むすび

なんか、うまくまとまらなかったような…。

若者向けニューディールの政策評価については、できればもう少し新しい数字を示したかったのですが、探しているうちに時間切れがきてしまいました。色々不十分なところがあったと思います。

ニューディールの話は今回で終わります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。よろしければ、人気blogランキングへ1票お願いいたします。人気blogランキングへ

[参考にしたもの]

☆ Home page: The Labour Party: securing Britain's future, http://www.labour.org.uk/index.php?id=employment04 (last visited March 16, 2006).
☆ National Audit Office, The New Deal for Young People, Feburary 2002.
☆ National Institute of Economic and Research, Does welfare-to-work policy increase employment?: Evidence from the UK New Deal for Young People, August 2001.
☆ Trades Union Congress, The New Deal and Race, May 2004.


☆ 「海外労働時報 [イギリス2002年6月] 」(http://www.jil.go.jp/kaigaitopic/2002_06/englandP02.html、最終アクセス2006年3月17日)
☆ 「海外労働時報 [イギリス2003年1月] 」(http://www.jil.go.jp/kaigaitopic/2003_01/englandP01.html、最終アクセス2006年3月17日)
☆ 勇上和史「EU雇用戦略の加盟国における展開―イギリスのニューディール政策―」2004年2月(http://www.jil.go.jp/event/ro_forum/resume/040226/yuugami.pdf)

[関連記事]

☆ 英国ニューディール政策~若者向けニューディール編(1)



スポンサーリンク

トラックバック

URL :

最近の記事
カテゴリー
カレンダー(月別)
07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
RSSフィード
本など
「ニート」って言うな! (光文社新書)

若年者就業の経済学
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
心と身体
126位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
6位
アクセスランキングを見る>>
リンク
このサイトについて

このサイトはリンクフリーです。張るのも剥がすのもご自由になさってください。相互リンクは現在募集しておりません。

携帯用アドレスを取得されたい方は、「こちら」をクリックしてください。

このブログのリンク先のご利用につきましては、ご自身の責任のもとでお願いします。なお、本等のリンクについては、Amazon.co.jpのアフィリエイトプログラムを導入しています。

なお、「富条」はハンドルネームです。本名は全く違う名前です。

メールは nhjournal77@yahoo.co.jp まで。