負の強化、罰

先日、「正の強化」のお話をしたので、今回は「負の強化」のお話です。

「負の強化」の強化がニートやひきこもりの社会参加にどう役立つかは私には分からないのですが、何かの参考にはなるかもしれません。心理学初学者の富氏が、自身の復習も兼ねて、まとめます。

「負の強化」は、しばしば「罰」と混同されるので、両者の違いについても触れています。

今回の記事をまとめると、下の表のようになります。

行動の頻度+行動の頻度-
刺激を与える正の強化正の罰
刺激を除く負の強化負の罰

「こんな表いきなり見せられても、わけが分かんない!詳しく知りたい!」という方は、続きをどうぞ。 * * * * * * * * * *

■ 負の強化とは何ぞや

前回お話した「正の強化」(Positive Reinforcement)は、褒めたりごほうびをあげたりするなど、快楽を与えることにより、行動を強化するというものでした。

これに対して「負の強化」(Negative Reinforvement)は、不快なことを取り去ることにより、行動が強化されるというものです。

例えば、「うちのお母さん、日ごろ機嫌が悪くて嫌だな」と思う子どもが、テストで高得点をとったところ、お母さんの機嫌がよくなり、その後、テストで高得点をとる頻度が増えたという場合を言います。

※ 「負の強化」の説明を修正しました(11/13/2008)。

なんだか、ニートやひきこもり、不登校の若者の説明のようです。もっとも、全てのひきこもりや不登校の事例が、負の強化で説明できるわけではないとも思いますが。

負の強化について、高校の定期試験を例を挙げて説明しましょう。テストで赤点(欠点、落第点)を多くとると、進級できない危険があります。生徒はそれを避けようと、一生懸命勉強するわけです。このようにして、赤点を避けるという行動が強化されます。

■ 「負の強化」は「罰」とは別物

「なんだ、負の強化って、罰のことじゃん」

と思ったあなた!違います。行動分析では、「負の強化」と「罰」は別物として考えられています。これは間違われやすいので、気をつけましょう。

■ 罰とは何ぞや

「正の強化」「負の強化」が行動の頻度を上げる、行動を強化するものであるのに対して、「罰」(Punishment)は、行動の頻度を下げる、行動を「弱化」するものです。

「弱化」という言葉は我々一般人が使うことは普通ありませんが、行動分析学では、「強化」と対をなす概念として用いられています。

この「罰」にも、「正の罰」(Positive Punishment)と「負の罰」(Negative Punishment)があります。

◇ 正の罰

これは分かりやすいです。例えば子どもが何か悪いことをしたときに、お尻ペンペンしたり、叱ったりして不快な刺激を与えると、悪いことをしなくなる、悪いことをする頻度が下がるというものです。

◇ 負の罰

負の罰というのは、少し分かりにくいかもしれません。何か刺激を除くことにより、行動を減少させるものです。

例えば、子どものしつけの技法の1つして、「タイムアウト」と呼ばれるものがあります。子どもが何か悪さをしたときに、部屋に一定時間閉じ込めたり、廊下に立たせたりすることです。こうして、子どもが悪さをする状況から離れさせることにより、悪さをする頻度を下げることができます。

■ 罰は学習に効果的か

行動分析や心理学に関する本を読んでいると、罰は強化に比べて学習にあまり効果的ではないとする記述が目立ちます。

行動分析の父 B. F. Skinner にしても、罰の効果は一時的だし、罰を与えたからといってどう行動するのが正しいかを学習させることはできないとして、かなり否定的に見ています。

とはいえ、罰が全否定されるわけではありません。必要な場合も出てくるでしょう。次の4原則に則って行われれば、罰は学習に効果的です。しかし、実際にはこの原則を守るのは簡単ではありません。

○ その罰が犯した違反に適当であること
○ その罰を実施する際には、説明もすること
○ その罰には、いくらか償いを含めること
○ その罰は、犯した罪の直後にすぐ、適度に行われること
Hayes, N. (2003). Teach yourself applied psychology. (2nd ed.). Chicago: McGraw-Hill. 54. より作成。

■ まとめ

強化、罰をまとめた表を改めて示して、今回の記事を終わりにしたいと思います。

行動の頻度+行動の頻度-
刺激を与える正の強化正の罰
刺激を除く負の強化負の罰


以上、小学校入学早々、廊下に立たされたことがある富氏でした。人気blogランキング参加中です。もしよろしければ、下の「人気blogランキングへ」をクリックしてくださると嬉しいです。

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[補論~ その他、オペラント条件づけに関する用語]

◇ 好子(Positive Reinforcer)
「正の強化子」とも言う。行動の直後に現れた場合、行動が強化される刺激のこと。読み方は「こうし」。

◇ 嫌子(Negative Reinforceいた」r)
「負の強化子」とも言う。行動の直後に消失した場合、行動が強化される刺激のこと。読み方は「けんし」。

※ 「好子」「嫌子」の説明を修正しました(12/03/2008)。
※ 「消去」の説明、消去しました。自分の説明に自信がなくなったので…。(2006/09/24)

[関連記事]

◆ 褒めることで、ニートひきこもりは変わるのか~正の強化

[参考にしたもの]

◆ Hayes, N. (2003). Teach yourself psychology. (3rd ed.). Chicago: McGraw-Hill. 154-155.
◆ Lavay, W. B., French, R., & Henderson, L. H. (2005). Positive behavior management in Physical Activity Settings. (2nd ed.). Champaign: Human Kinetics Publishers. 88.
◆ Muijs, D. & Reynolds, D. (2005). Effective Teaching: Evidence and Practice. (2nd ed.). Gateshead: Sage Publications Ltd. 85. ◆ Richelle, M. (1995). B.F. Skinner. New York: Psychology Press. 59.
◆ Sundel, M. Sundel, S. S.. (2004). Behavior change in the human services: Behavioral and cognitive principles and applications. Sage Publications, Inc.
◆ Pierce, D. W., & Cheney, D. C. (Eds.). (2003). Behavior analysis and learning. (3rd ed.). Mahwah: Lawrence Erlbaum Associates, Inc. 162.
◆ 杉山尚子. (2005). 『行動分析学入門-ヒトの行動の思いがけない理由』、集英社新書。 ◆ オペラント条件づけ. (2006, September 22). Wikipedia. Retrieved September 22, 2006 from
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=
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