国際労働機関(ILO)の報告書に「NEET」の4文字が

昨日の『読売新聞』(電子版)に掲載されたニートに関する記事には、びっくりしました。

先進国の「ニート率」13%…ILO調査

「ニート」が、そんなにいるわけないだろうと、私は当初思いました。

日本のニート率でも、2%程度というのが私の理解です。厚労省『平成18年版労働経済の分析』によると、ニート(正確には「若年無業者」)人口は2005年で64万人、他方、15~34歳人口は、総務省統計局「労働力調査」によると、2005年で3256万人です。

もしや読売は、「ニート」を「失業者」と取り違えでもしたのでしょうか。そこで、私、この記事の元ネタにあたりますILOの報告書 Global Employment Trends for Youth, Geneva, October 2006. を読んでみることにしました。

■ 結論

お先に結論を言うと、ILOが定義する「NEET」が、わが国で使われている「ニート」の定義と違うということです。ILOは、日本で言う「ニート」に加えて、失業者をも加えています。ほかにも色々違いがあるのですが、読売の記事は、こうした違いを断らずに書いているものですから、誤解を招きます。

ILOが一番言いたかったことは、世界で雇用されていない若者が相当数に上るということです。 * * * * * * * * * *

■ ILOの報告書を読む

◇ 「NEET」の定義

読売の記事の元ネタにあたる、ILOの報告書 Global Employment Trends for Youth を読みます。

なるほど、報告書の中に「NEET」の4文字が、はっきりとあります。

Figure 4.3: Share of youth neither in employment nor education (NEET) in total youth population, regional averages

そして、次のような文章を発見しました(訳の品質は保証しません)。

教育も受けていなければ雇用もされていない若者(NEET)の割合は、若者人口における、活用されていない労働潜在力を測る優れた指標である

The share of youth who are neither in education nor employment (NEET) is a good measure of the non-utilized labour potential of the youth population

※ 原文も、イタリック体です。

ILOの「NEET」の定義は、「教育も受けていなければ雇用もされていない若者」だったのです。

この定義は広いもので、日本で言う「ニート」に加えて、求職活動をしている「失業者」をも含むものです。

さらに報告書には、家事従事者まで「NEET」に含めることを窺わせる記述があります。

中央アメリカや南アメリカにおいて若い女性の方が若い男性よりも NEET の割合が大きいのは、おそらく次のような事実によって説明できるだろう。文化的、経済的制約によって、先の地域の若い女性はしばしば労働力にはならない。なぜならば、彼女らは家事を要求される傾向があるからだ。

The larger NEET shares for young women than young men in the regions of Central and South America and sub-Saharan Africa can probably be explained by the fact that, due to cultural and economic constraints, young women in the regions oftentimes fall outside of the labour force because they are required to tend to household duties.

日本で「ニート」に家事従事者を含めるべきかどうかについては、厚労省と内閣府の間でも議論が分かれています。国民の間では、いわゆる「カジテツ姫」を「ニート」として批難する意見が多いような気がします。

最後に、「若者」の定義も、日本の「ニート」とILOの「NEET」とでは違います。日本の場合、15~35歳ですが、ILOだと15~24歳です。年齢層で比較すれば、ILOの方が定義が狭いですね。

◇ 先進国しか計算できなかった

読売の記事を読むと、先進国の高い(ILOが言う)NEET率に焦点が当てられているため、そうか、NEETは先進国の問題なんだな、という誤った解釈をしてしまいそうです。

そうではなくて、ILOは単に途上国のデータを十分に集めることができず、公表できなかっただけです。これは、どうしてかというと、OECDの国々しかデータを集めることができなかったからです。

不幸なことに、NEETの総数を細かく分けた詳しい情報は、これまでOECDのグループでのみでしか入手できない。

Unfortunately, the detailed information from which to disaggregate the NEET total is available only for the OECD group of countries to date.

OECD加盟国は、欧米など、先進国ばかりです。

■ ILOが言いたかったこと

ILOの今回の報告書が伝えたかったのは、雇用されていない若者の数が多いということです。「NEET」に関する記述は、58ページに及ぶ報告書の中の、ほんの1ページ程度にすぎません。報告書では、若者の労働市場の傾向や、貧困の傾向など、若者の失業問題について、様々な角度から分析がなされています。

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