ひきこもりとは何か

ひきこもりの定義として、代表的なものとして斉藤環氏による「社会的ひきこもり」の定義と、厚生労働省による「ひきこもり」の定義を示します。

■ 『社会的ひきこもり』による定義

ひきこもりの定義の中で、最もよく知られているものは、斎藤環著『社会的ひきこもり 終わらない思春期』PHP新書、1998年によるものでしょう。非常によく引用されており、決定的といっても言い過ぎではないほどです。以下、『社会的ひきこもり』より引用します。

「20代後半までに問題化し、6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加しない状態が持続しており、ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの」[1]
* * * * * * * * * *

厳密にいうと、斎藤氏は「社会的ひきこもり」と名づけています。「ひきこもり」に「社会的」がつきます。これは英語 "Social withdrawal" の直訳なのだそうです。[2]

定義を見てみますと「20代後半までに問題化」とか「ほかの精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの」とあります。これはどういうことかと言いますと、社会的ひきこもりは思春期の問題だということです。[3]

こう言うと、妙に感じる方がいらっしゃるかもしれません。「20代後半までに問題化」というが、思春期というのは、もっと早い、小学校高学年から中学校あたりのことを言うのではないか、と。しかし、斎藤氏は、現代の日本では思春期の年齢はかなり遅くなっているのではないかと見ています。「現代の青年は二十歳ではなく、三十歳で成人する」[4]

こうした思春期問題からの捉え方のベースには、精神分析の理論があるものと思われます。

■ 厚労省の定義

厚生労働省の定義もよく引用されます。平成15年7月28日に発表された『10代・20代を中心とした「ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン』によるものです。以下、引用します。

「ひきこもり」はさまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態のことをさします。[5]

斉藤氏は社会的ひきこもりを思春期問題と捉えているのに対して、厚労省は、思春期問題にこだわらず、自宅以外での生活の場が長期に失われている状態をひきこもりと定義づけています。

厚労省の定義に従いますと、思春期問題に限らず、統合失調症やうつ病などが原因でひきこもっている人たちも「ひきこもり」に含まれることになります。また、年齢も関係ありません。斎藤氏の定義に比べると広いと言えます。

厚労省はこのように定義した上で、「『ひきこもり』は精神保健福祉の対象」[6]としています。それにしても、「就労」だとか「就学」だとか、ニートの定義と妙に似ているのが気になります。

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注と参考文献

[1] 斎藤環著『社会的ひきこもり 終わらない思春期』PHP新書、1998年、25ページ。
[2] 同上書、18ページ。
[3] 同上書、26ページ。
[4] 同上書、26ページ。
[5] 厚生労働省/国立精神・神経センター精神保健研究所社会復帰部「10代・20代を中心とした『ひきこもり』をめぐる地域精神保健活動のガイドライン −精神保健福祉センター・保健所・市町村でどのように対応するか・援助するか」、2003年。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/07/tp0728-1.html
[6] 同上。


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