ひきこもりグループセラピー、参加者とスタッフのズレ

鈴木真之「引きこもりの子どもを持つ親グループとの関わり : スタッフの実施意図とメンバーの参加目的とのズレに関する考察」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学』、第50巻、344-345ページ、2003年。

↑ ひきこもりの子を持つ親を対象にしたグループセラピーに関する研究です。タイトル通り、スタッフの実施意図と親の参加目的との間のズレについて考察されています。ズレとは、どういうことでしょうか。

[スタッフの実施意図]

同じ問題を抱えている親同士が話し合うことで、自分の気持ちや行動に気づき支え合うことが出来るようになる場を提供する。親たちの自発性を尊重。

[親の参加目的]

スタッフに「何とかして欲しい」「教えて欲しい」

■ 私の事例

私がひきこもりデイケアで経験したことと同じです。

私が参加したデイケアの場合、親ではなく本人を対象にしたものでした。

私も当初は自分が自発的に変わるんだと思いつつも、スタッフに「何とかして欲しい」「教えて欲しい」と考える傾向がありました。少しでも早くひきこもりから脱したくて藁をも掴む思いでしたし、そもそもスタッフの役割はそういうものだと思い込んでいました。

実際、スタッフにこんなことを聞いたことがあります。

どうすれば、社会に出ることができるか分からない。その方法を教えて欲しい。
* * * * * * * * * *

しかし、これに対するスタッフの答えは、こうでした。

富重さんは、どう考えているの?

このスタッフはおそらく、逆に私に問いかけることで、私自身が自発的に問題解決の答えを見つけることを期待したのでしょう。ですが私は、自分で考えても分からないから聞いているのに…と不満を感じたものです。

もともと、スタッフのデイケア開催意図はそういうものではなかったわけです。デイケアはメンバーの自発性の発露を尊重するもので、スタッフはメンバーにあまり指示や助言はしないのです(たぶん)。ですが、そうしたことを知らなかった私は突き放されたような感じを受け、勝手にスタッフに失望してしまいました。スタッフから見れば、私は依存心が強いと映ったことでしょう。

デイケアの趣旨をよく知らずに参加した私が一番悪かったのでしょうが、スタッフも予め説明してくれてもよかったのに、と思います。

■ クライエント中心療法

論文で取り上げられているグループセラピーも、おそらく私が参加していたデイケアも、クライエント中心療法(来談者中心療法)です。つまり、スタッフがクライエントに指示をすることなく、クライエント自身が自分の力で答えを見つけることを促すというものです。

でも、こんなの、予め説明されないと分からないよ…。

ひきこもりなんて危機的状態に直面したら、スタッフに助けを求めたくなるのが自然だと思います。

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◇ ひきこもりグループセラピー(ニートひきこもりJournal別館)




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コメント

どうすればいいの?
私も以前カウンセリングにかかっていたとき、同じようなことがありました。自分から何かしなくちゃダメなんでしょうけど「何か」っていったい何なんでしょう?
ひきこもり・ニートには精神的支援とともに就労、或いは進学支援が必要だなあ、というかあって欲しいです。
世間の人に甘えだ、といわれても私(達)には具体的な助けが必要だと思うのです。
悪五郎さん、コメントありがとうございます。
おそらくその「何か」は自分で見つけよ、ということなのでしょう。そして、そのための手助けをするのが、クライエント中心のカウンセリングということなのでしょう。
斉藤環氏は、ひきこもりから抜け出すには第三者の介入が必要だと主張していますね。
はじめまして
どうすれば?僕が思うに職場で一ヶ月ぐらい一緒にいて(人間関係や溶け込めやすいように)働いて欲しい。
特に初日なんかは緊張するから誰か一緒にいてくれると助かるし
イッサーさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
採用面接を突破すればそれで援助おしまい、というのではなく、その後のことまでケアがあると心強いですね。


社会は、「ニート」「ひきこもり」という「不正解判定」を下しているくせに、
「正解」に到る「正しい」過程を教えてはくれないのですよ
そういう悪い社会なのです。



そもそも、
相談者に相談できる(解答とは言わなくても、参考情報を教える)人間がいなければ
「自分で考える(実際は自分ひとりで考えているわけではない)」なんて不可能であるのですから、


スタッフも、そういう自分たちの「常識」という枠に閉じこもったひきこもりです。
自分たちが考えられないことを考えられないのです。

これは、99.99%以上の人間がそうです。
ほとんどの人間は「自分たち」(自分ひとりではないので、ひきこもっているとは感じない)、という狭い世界に閉じこもっているだけです。

tak さん、コメントありがとうございます。
ピント外れのお答えだと申し訳ないのですが…。
「正解」に至る「正しい」過程の情報に対する需要があれば、ニート、ひきこもり関連の本が出版されたり、支援事業が生まれるなど、民間部門、公共部門で、そうした需要を満たそうとする動きが出てくるものだと思います(実際、そうした動きはあります)。

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