ひきこもり、労働、余暇

ひきこもりの人は、労働時間がゼロです。これは経済学的にどう説明できるのだろうかと頭を抱えています。

■ 労働と余暇の選択

経済学では、個人がどれだけの時間働くかを、次のように説明します。

まず、1日には働く時間と、それ以外の時間(ここでは「余暇」と呼びます)があるものとします。

労働時間 + 余暇の時間 = 総時間

1日の時間は限られているので、働けば働くほど、余暇の時間を減らさなければなりません。逆に、余暇の時間を増やそうとすれば、働く時間を減らさなければなりません(前回お話した「トレードオフ」です)。

働けば働くほど所得が増えます。所得が増えると消費にお金を使うことができて、嬉しいものです。しかし、あまり働くとそのうち飽きてきて、今度は余暇の時間が欲しくなります。

余暇の時間があるというのも嬉しいものです。しかし、あまり働かないとそのうち飽きてきて、今度は働いてお金が欲しくなります。

こうした状況で、どれだけの時間働くかを個人は決定するものと経済学では考えます(ずいぶんと大雑把に説明しましたが、だいたいこれで合っていると思います)。

■ ひきこもりの人が働かないのは?

もし個人が、労働時間を上のように決定するものだとすると、ひきこもりの人が働かないのは、次のように説明できます。

◇ 余暇に飽きず、働こうという気が起きない

24時間余暇に時間を過ごしても全く飽きず、働いて賃金を得て消費をしようという考えが全く起らない人は、労働時間がゼロです。

◇ 既にお金をたくさん持っている

既にたくさんお金を持っていると、働いてお金を稼ごうとはあまり考えなくなります。それにしても、労働時間ゼロというのは極端です。

◇ 賃金が低い

働いても賃金が低いと、働いてお金を稼ごうとはあまり考えなくなります。それにしても、労働時間ゼロというのは極端です。


しかし、これでは、ひきこもりの人が働かないのを必ずしもうまく説明できていないのではないかと思うのです。 * * * * * * * * * *

実は、上でお話した経済学的説明には、いくつか仮定がおかれています。それらの仮定が、ひきこもりの人にはそぐわないのではないかと思うのです。

■ ひきこもりの人にはそぐわないと思われる仮定

◇ 合理的経済人

ひきこもりの人には、どうも「働きたいのに働けない」人が多いように思われてなりません。そういう人は、経済学が仮定する「合理的経済人」ではないのではないかと思います。

ひきこもりの人の中には、社会不安障害や回避性人格障害の人が含まれているのではないかとも言われています。社会不安障害には、脳の扁桃体という部位の機能に異常があって、脳内の神経伝達物質が過剰に分泌されるという話も聞きます。このあたりになると、よく分からないのですが行動経済学や神経経済学になるのでしょうか?

◇ 好きな時間働くことができる

上のお話では、個人は自由に働く時間を決めることができるものと仮定されています。

しかし、ひきこもりの人が働こうにも、履歴書の空白の問題があり、なかなか思うように採用してもらえません。

* * * * * * * * * *

私なりに経済学的に考えたらこうなったのですが、なにしろ経済学は苦手なもので、もしかしたらどこか間違っているかもしれません。

今年1年ありがとうございました。よいお年を。以下、付録です。

[付録1]

後方屈曲の労働供給曲線左図は、後方屈曲の労働曲線。

低賃金の人の場合、賃金が上がれば上がるほど、さらに働いて賃金を得ようというインセンティブ(誘因)が働きます。

しかし、ある程度賃金を得て経済的に豊かになると、もう十分となり、働くのをやめて余暇に時間を使おうというインセンティブが働きます。

ひきこもり者の労働供給曲線ひきこもり者の労働供給曲線は、左図のようになるのではないかと思います。

賃金に関係なく、ひきこもり者の労働時間はゼロです。






[付録2]

数学の復習。上の労働・余暇選択モデルは、数式で表すと、次のようになります。

max U(l, c) subject to pc + wl = wT + Y
{l, c}

max:以下を最大化する
{l, c}:l とc を選ぶことによって
U(l, c):効用関数
l:余暇
c:消費
subject to:以下の条件で
p:消費財の価格
w:賃金
T:総時間
Y:労働と無関係の所得

ラグランジュ関数を

L(l, c, λ) = U(l, c) + λ(wT+Y-pc-wl)

と構成すると、1階の条件は

Ul - λw = 0
Uc - λp = 0
wt + Y - pc - wl = 0

λを消去して整理すると

Uc/Ul = p/w
wT + Y - pc - wl = 0

Uc/Ul は、c の l に対する限界代替率(MRS)。p/w は相対価格。

2階の条件は略。ポイントは縁つきヘッセ行列。|

しばらく数学やってないので自信がないのですが、合ってるかな?


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