「社会的ひきこもり児」
「ひきこもり」が知られるところになったのは、1998年の斉藤環著『社会的ひきこもり』がきっかけでしょう。この本が出てから、そろそろ丸10年になります。ところで、その斉藤環氏の著書よりさらに前、1992年頃に開かれた第17回日本行動療法学会において、「社会的ひきこもり児の行動評定に関する検討」という演題があったことをたまたま発見し、驚きました。
翌1993年には、「不登校を伴う社会的ひきこもり児に関する社会的スキル訓練」という研究が、『特殊教育学研究』という雑誌に掲載されたそうです。
■ 社会的ひきこもり児
もっとも、おそらくここで言う「社会的ひきこもり児」は、斉藤環氏が言う「社会的ひきこもり」とは別物ではないかと思います。これは日本行動療法学会の抄録や『特殊教育学研究』を読んでみないとはっきり分からないのですが、もしかすると 「社会的ひきこもり児」は、"socially withdrawn children" ないし "socially withdrawn child" という英語を日本語に訳したものではないかと推測しています。
※ "withdrawn" は形容詞で、「ひきこもった」という意味があります。
■ socially withdrawn children
"socially withdrawn children" という言葉は、英語圏では学術界で1950年代には既に使われていたようです。
1991年のある論文によると、"socially withdrawn children" は 「仲間集団から孤立している」("isolate themselves from peer group")子供たちのことです。ただし、同じ孤立している子供でも、攻撃的ふるまいによって孤立させられた子供たちとは区別されます。
こうした子供たちの社会的ひきこもりは、幼児期における内在化障害(不安障害、抑うつ障害など)の一つの症状と見なされてきたそうです。興奮の閾値が低いといった生物学的な話も出てきます(Jerome Kagan ハーバード大教授の研究など)。
このあたりの話は、「ニートひきこもりJournal 別館」で以前お話した、メリーランド大学の研究と重なります。
↓ そのうち、ひとつ
「ひきこもりの子、幼少期の親子関係に問題?」
いずれにせよ、先に出てきた「社会的ひきこもり児」は、おそらく "socially withdrawn children" の邦訳ではないかと思うのですが、これは斉藤環氏が言う「社会的ひきこもり」とは別物でしょう。だいいち、斉藤氏が言う「社会的ひきこもり」は思春期問題なのに対し、"socially withdrawn children" は思春期に達していない子供も対象に入れているようですから。
[文献]
◇ Rubin, H, K., Hymel, S., Mills, S.L.R., and Rose-Kransor, L. (1991). Conceptualizing different development pathways to and from social. isolation in childhood. In Cicchetti, D. and Toth, L.S. (Eds.), Internalizing and Externalizing Expressions of Dysfunction (pp. 91-123). New Jersey : Lawrence Erlbaum Associates.
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