「健康上の理由」で働けない問題への政策的対応

厚生労働省や内閣府が言うニート(正確には「若年無業者」)には、病気やけがで働けない人も含まれています。厚労省の『平成17年版労働経済の分析』によると、ニートの人が求職活動をやめた理由のトップが、「健康上の理由」です。

政府はこうした人をニートに含めていながら、ニート対策には「人間力の強化の推進」などを挙げており、健康問題で働けない人については話は別、と考えているようです。こうした事情で働けない人については、特にこれといった政策的対応はなされていないのではないかと思います。病気やけがは、本人が病院に行くなどして治せばよいということなのでしょう。

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イギリスでは、健康と労働について、踏み込んだ政策が議論になっています。

今月17日に、イギリス政府の健康・労働問題のナショナルディレクターである Dame Carol Black 氏(前英国内科医師会会長)が、 "Working for a healthier tomorrow " と題するレビューを発表し、話題になりました。レビューでは、イギリス国民の健康を増進し、国民がよりよく働けるように、数々の提言がなされています。例えば、病気で仕事を休んだ人に対して、病欠が長期化する前の早い段階で介入を行う、"Fit for Work" が提言されています。

このようなレビューが出た背景には、イギリスが推進してきた "Welfare to Work"(福祉から労働へ) という政策があるようです。イギリスではメンタルヘルスなど、健康上の理由で働けず、就労不能手当等を受け取る人が相当数います。働けない人が存在することによる経済的コストは大変なもので、レビューによると年間1,000億ポンド(20兆円)を越えます。こうした人たちをできるだけ減らし、多くの人に労働に参加できるようにするということです。経済的な理由以外にも、「社会的排除」の是正などがこうした政策の根拠になっています。

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労働問題について、政府が国民の健康問題にまで踏み込むとは、驚きです。できるだけ多くの人を労働に参加させようという強い意志を感じます。

政府がここまで介入する必要があるのかという気もしないまでもないですが、これには労働へのインセンティブ(誘因)を削ぐ就労不能手当の存在など、イギリス特有の事情があるのでしょう。

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