経済・生活問題で自殺した若者の数の推移

就職氷河期は、ニート、ひきこもりの増加の背景に挙げられることが多いです。ではその氷河期時代に、就職難で悩み、ニートにもひきこもりにもならずに、あるいはそれらを経験した後に、不幸にして自殺に追い込まれた若者は増えたのでしょうか。

2004年3月24日の『読売新聞』(電子版)には、「就職難で?学生の自殺増加、大学側が予防に本腰」という記事が掲載されています。

ですが、自殺統計はそれを裏付けているのだろうかと疑問に感じ、警察庁や統計局の資料に目を通していました。

■ 自殺の原因・動機

自殺者の原因・動機について統計的に把握するのは限界があります。統計上は、自殺の原因・動機は遺書をもとに判断されるのですが、遺書を残さずに自殺する人が実に多いからです(例。平成18年中は、警察庁によると、3,395名の20〜29歳の若者が自殺しましたが、このうち遺書を残したのは1,031名に過ぎませんでした)。遺書から、自殺の原因・動機がはっきりするもののみを見るほかありません。

警察庁は、自殺の原因・動機を、「家庭問題」「健康問題」「経済・生活問題」「勤務問題」「男女問題」「学校問題」「その他」「不詳」に分類しているのですが、就職難で自殺した者はこれらのうちどれに分類されるのだろうかと悩んでしまいます。「経済・生活問題」が最も近そうなので、これに注目して見ていきます。

以下の表は、年次別の20-29歳人口、そのうちの自殺者数、そのうち遺書を残した者の総数、さらにそのうち経済・生活問題で自殺した者をまとめたものです。

表1 経済・生活問題で自殺した若者の推移(単位:人、20-29歳人口のみ万人)
年次20-29歳人口自殺者数遺書あり経済・生活問題で自殺
20011,8043,095795139
2002 1,7443,018816159
20031,6973,353886174
20041,6483,247993204
20051,5633,409976177
20061,5333,3951,071171
資料:統計局ホームページ/人口推計(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/index.htm 最終アクセス2008年4月11日)。統計(警察庁)(http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm 最終アクセス2008年4月11日より)。これらより作成。

20-29歳人口は減少傾向にあるにもかかわらず、経済・生活問題で自殺した者の数は2004年まで増加の一途をたどっています。2004年には204人に達していますが、これは2001年のおよそ1.5倍の水準です。

ただし、その数は、何十万人とも言われるニート、ひきこもりのそれに比べると、遺書を残さなかった自殺者数や年齢の幅を考慮に入れても、非常に少ないことが分かります。

■ 限界

自殺の原因・動機については、2001〜2006年までのデータしか集めることができませんでした。できれば、就職氷河期以前からのデータを集めたかったです。

また、ここで取り上げたのはあくまで「経済・生活問題で自殺」した者の数であり、就職難で自殺した者とは異なります(これが大きい…)。

■ 参考資料〜増える若者の自殺

* * * * * * * * * *

↓ 厚生労働省ウェブサイトより、性・年齢(5歳階級)別自殺死亡率(人口10万対)の年次比較です。90年、94年から2003年にかけて、15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳のいずれの年齢階級においても、自殺死亡率は概ね増加しています。

http://www-bm.mhlw.go.jp/toukei/
saikin/hw/jinkou/tokusyu/suicide04/10.html


http://www-bm.mhlw.go.jp/toukei/
saikin/hw/jinkou/tokusyu/suicide04/3.html


もっとも、それ以外の年齢階級でも自殺者は増加していますし、20〜24歳、25〜29歳については、50〜60年の方がずっと自殺率が高いです。

これとは別に、年次別の20-29歳人口と自殺者数、そして1万人あたり自殺者数を独自にまとめてみました。自殺者数の割合は、前者と後者を比較したものです。この表も、若者の自殺が増加傾向にあることを示しています。

表2 20-29歳の若者の自殺者数の推移(単位:人、20-29歳人口のみ万人)
年次20-29歳人口自殺者数1万人あたり
20011,8043,0951.72
2002 1,7443,0181.73
20031,6973,3531.98
20041,6483,2471.97
20051,5633,4092.18
20061,5333,3952.21
資料:表1と同じ、により作成。

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コメント

http://blog.goo.ne.jp/keepers_real/e/abe95f29ef7068291087d0ad9d07701a

若いうち、まだ親御さんが生きてるあいだはなんとかなる人も多くて、上記のサイトのように、どうしようも無くなってから自殺する人(これも経済苦だろうか)も多くなってくるんじゃないでしょうか。

昔、就職難だった頃に、就職できなくて自殺した人のニュースを聞いたことがあります。かなり偏差値の高いとこの大学生だったと思います。
Xさん、コメントありがとうございます。
今回の統計は主に20〜29歳の自殺を取り上げましたが、経済苦に至る頃には、たしかに、より高い年齢に達しているかもしれません。最近ではひきこもりの平均年齢が30歳以上に上がったという報告も出ています。

ネット上のニュースや新聞の社会面では殺人事件が目立ちますが、自殺については、要人や芸能関係者、子供といった目を引くケースでもない限りあまり報道されません。ただ、警察庁の統計によると、殺人の認知件数は年間1,200〜1,400件程度で、30,000件を記録する自殺に比べるとずっと少ないです。表に出ない自殺は多いということでしょう。

私も、就職氷河期に知人が就職先が見つからなくて自殺したという投書を、先日、あるところで読みました。今回の記事を書いたのは、それがきっかけです。

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