非労働力人口の分類

これまでにもお話してきましたが、厚生労働省は、ニートを「15~34 歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない『その他』の者」と定義し、その数を集計しています。[1] その数は2006年で62万人と発表され[2]、マスコミもこの数字を引用しています。よく「ニートが増加している」[3] と言われますが、それもこの厚労省の推計が根拠になっています。

しかし、よく考えてみると妙な定義です。これだと、重い病気や障害(障碍)で働けない人や、ボランティアに従事している人、刑務所で刑に服している人までニートに含まれてしまいます。

どうしてこのような定義になったのでしょうか。私は、これは政府統計で用いられている、非労働力人口の分類にかぎがあるのではないかと見ています。

ニート人口の集計のもととなっている「労働力調査」や「国勢調査」では、15歳以上人口は次のように分類されています。

15歳以上人口
  労働力人口
    就業者
    完全失業者
  非労働力人口
    家事
    通学
    その他(高齢者など)

このうち、「労働力人口」はニートではありません。働いている人(就業者)や、職探しをしていて、仕事があればすぐに就ける人(完全失業者)をニートに含めるのはおかしいです。ですから、そうした人たちを除いた「非労働力人口」の方を見てみましょう。

非労働力人口の分類
↑ 統計局ホームページより、「平成19年 労働力調査年報( I 基本集計)」のうち、「第15表 就業状態,農林業・非農林業,従業上の地位(非農林業雇用者については従業者規模),年齢階級別15歳以上人口」を エクセルで開いた内容の一部です。

非労働力人口は、「家事」「通学」「その他」に分類されています。

おそらく、このうち「その他」に該当する若者が最もニートに近そうで、しかもこの分類がそのまま使えそうだということで、例の定義になったのではないかと私は見ています。しかし、この定義だと、先ほどお話した通り、重い病気や障害で働けない人等がニートに含まれてしまうという問題があります。

このように、非労働力人口は「家事」「通学」「その他」に分類されているのですが、実はこれ以外にも分類がないことはないのです。ただ、この別の分類は、ニートの数を把握するには、上の分類以上に使えません。 * * * * * * * * * *

非労働力人口
  就業希望者
  就業内定者
  就業非希望者

上のような分類も、「労働力調査」では用いられています。就業希望者、就業内定者、就業非希望者はさらに細かい分類が複数パターンあります。私が確認した限り、2パターンです。

[パターン1]

非労働力人口
  就業希望者
    適当な仕事がありそうにない
      近くに仕事がありそうにない
      自分の知識・能力にあう仕事がありそうにない
      勤務時間・賃金などが希望にあう仕事がありそうにない
      今の景気や季節では仕事がありそうにない
      その他
    家事・育児のため仕事が続けられそうにない
    健康上の理由
    その他
  就業内定者
    学校卒業後につく
    その他
      4週間以内につく
      5週目以降につく
  就業非希望者
      うち 過去1年間に離職

[パターン2]

非労働力人口
  就業希望者
    つける
      すぐつける
      2週間以内につける
      3週目以降につける
    つけない・わからない
  就業内定者
    学校卒業後につく
      4週間以内につく
      5週目以降につく
    その他
  就業非希望者

ニートの総数を把握するためには、少なくとも通学者や家事従事者は除く必要があります。このうち通学者については、在学中の15~24歳の者は別に集計するという措置がとられています。しかし、家事従事者については、パターン1の就業希望者の項目を別とすれば、ごっちゃにされています。例えば、就業非希望者のうち、家事従事者がどれだけいるかが分かりません。そのため、この分類だと、家事のために非労働力人口となっている者の数が分かりません。

そういうわけで、この分類法は、ニートの総数を把握するためには、ますますもって使えません。

なお、諸外国の中には、日本とは違う分類をしている国もあります。家事、通学といった理由の他、例えば病気や障害を理由に非労働力人口になった人を分類し、集計している国もあります。機会があれば、また取り上げたいと思います。

[関連ページ]

◇ 世界各国の非労働力人口の分類

[1] [2] 厚生労働省編『平成19年版 労働経済の分析』、28ページ、
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/
07/dl/01-01.pdf、
[最終アクセス2008年6月11日]
白書では、「ニート」ではなく、「若年無業者」という言葉が用いられています。

[3] 実はニートの絶対数は、64万人(2005年)から62万人(2006年)へと、やや減少しています。数字の出典は、上に同じ。



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