発展途上国のニート人口を求めてみる
とはいえ、「いない」ことを証明するのは難しいものです(「悪魔の証明」)。むしろ、途上国にニートが「いる」ことを証明する方が重要でしょう。
■ 途上国のニート人口を求めるのは困難だった
そこで、途上国の国勢調査などから、ニート人口を調べてみようと考えたわけですが、これは私にとって非常に困難な試みでした。途上国の統計資料を集めようにも、その国の言語が分かりません。多くの国では英語など複数の言語で資料が公表されてはいるのですが(英語なら何とか分かります)、それでも、言語ゆえか、それともそのお国の事情ゆえか、公表されている資料は限られています。
特に大きかったのは、年齢階級別の非労働力人口についての数字を集めることがほとんどできなかったことです。ニートは若者の問題のため、年齢階級別の数字が欲しかったのですが、ほとんど見つかりませんでした。このため、途上国のニート人口を算出することはできませんでした。
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※ このままこのエントリーを終わらせてもいいのですが、せっかくですから、無理を承知でまだ続きを書いてみます。
しかし、「ニート」に近い人たちの人口であれば算出することができました。先にもお話したとおり、ニート人口の算出に最も大きな障害となったのは、年齢階級別の非労働力人口が分からなかったことですが、全年齢階級の非労働力人口であれば分かる国がいくつかありました。
これをもとに、途上国の「ニート」(に近い)人口を求めてみます。そして、途上国のニート人口比率を日本と比較してみます。ただし、以下では少し無理なことをしています。
■ 方法
まず、「ニート」を定義する必要があります。厚労省は、ニートを「15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない『その他』の者」と定義しています。[1] この定義だと、病気や障害で働けない人や刑務所で刑に服している人等もニートに含まれてしまうという問題があるのですが、広く引用されていますし、日本と他国の比較には使えそうな定義です。ただ、年齢を15〜34歳に限定してしまうと、途上国の年齢階級別非労働力人口が分からないため(ただし、高齢者を除くことはできます)、途上国のニート人口を求めることができなくなります。そこで、ここでは「ニート」を、「非労働力人口のうち、家事も通学もしていないもので、高齢者を除く」と定義します。35歳以上の者も含めているので無理があるのですが、仕方がありません。また、「高齢者」の定義が曖昧ですが、これも厳密な年齢階級別非労働力人口が分からない他国との比較のためには、やむをえません。
日本と途上国の比較のために、それぞれの国の総人口に占めるニートの割合(ニート比率)も求めてみます。
前置きが長くなりましたが、いよいよ以下では、各国のニート人口とニート比率を求めます。いくつか具体的な途上国が出てきますが、これらの国を選んだのは、たまたまそれらの国の資料を見つけることができたからです。
※ 各表の参照先の最終アクセス日時は、2008年6月26日です。
■ 日本(2007年平均)
ますは、途上国との比較のために、日本のニート人口を示します。
表1 日本のニート人口 (単位:万人)
| 年齢階級 | 総数 |
| 15-19 | 9 |
| 20-24 | 16 |
| 25-29 | 18 |
| 30-34 | 18 |
| 35-39 | 19 |
| 40-44 | 15 |
| 45-49 | 15 |
| 50-54 | 22 |
| 計 | 132 |
http://www.stat.go.jp/data/roudou/report/
2007/ft/zuhyou/a01501.xls により作成。
表のように、54歳まで定義を拡張したニートの人口は、132万人です。日本の総人口は1億2777万1千人(2007年10月)[2] ですから、ニート比率はざっと1.03%です。
■ インド(全年齢層、2000年1月)
表2 インドのニート人口 (単位:人)
| 総数 | 扶養家族 | 乞食、浮浪者など | その他 | |
| 人数 | 260,770,477 | 230,109,201 | 630,940 | 30,030,336 |
http://www.censusindia.gov.in/Census_Data_2001/Census_data_finder/
B_Series/Main_activity_of_non_Worker.htm により作成。
インドの非労働力人口のうち、学生と家事従事者、さらに年金生活者を除いた者の数と、その内訳です。年金生活者を除いた理由は、日本の厚労省がニートの集計をする際には、年齢により、年金生活者は実質的に定義より除かれているからです。「乞食」は言葉が悪いと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、"Beggars" の訳として他に適当な言葉が思い浮かびませんでした。
その数約2億6千万人もいます。しかし、これは多すぎます。もしかすると、当初除いた「年金生活者」以外の「扶養家族」に高齢者が多く含まれているのではないかと思うのですが、定かではありません。この「扶養家族」を除いても、3,000万人を超える人々が、いわゆる「ニート」に近い状態にあります。
インドの人口は10億2870万人なので[3]、「扶養家族」を含めたニート比率は25.35%、含めないニート比率は2.98%となります。
■ タンザニア(全年齢層、2000年1月)
表3 タンザニアのニート人口 (単位:人)
| 総数 | 病気あり | 障害あり | その他 | |
| 人数 | 958,622 | 529,609 | 100,859 | 328,154 |
http://www.nbs.go.tz/labourforce/pdf/
Chapter%208.pdf により作成。
タンザニアの非労働力人口のうち、学生と家事従事者、さらに高齢者を除いた者の数と、その内訳です。
その数およそ96万人です。タンザニアの人口は3444万3603人(2002年;ニート人口集計と同じ2000年の人口は分かりませんでした)[4] なので、ニート比率はだいたい2.78%といったところでしょうか。
■ ヨルダン(2007年平均)
表4 ヨルダンのニート人口 (単位:人)
| 年齢階級 | 総数 | ? | 障害あり | その他 |
| 15-19 | 1,462 | 0 | 219 | 1,243 |
| 20-24 | 988 | 13 | 260 | 715 |
| 25-29 | 565 | 24 | 259 | 282 |
| 30-39 | 1,057 | 457 | 414 | 186 |
| 40-49 | 1,604 | 1,142 | 407 | 55 |
| 50-59 | 2,583 | 1,911 | 646 | 26 |
| 計 | 8,259 | 3,547 | 2,205 | 2,507 |
http://www.dos.gov.jo/sdb_pop/unempl/y2007_all/
emp_unemp10.10_1.e.htm により作成。
ヨルダンの非労働力人口のうち、学生と家事従事者を除いた者の数と、その内訳です。表のうち「?」とあるのは、資料では "With Means" と記されてあるものですが、どう訳せばよいのか分かりませんでした。
59歳まで含めた拡張ニートの定義に当てはまる人の数は8,259名、49歳までだと5,676名です。ヨルダンの人口は572万3000人であることを考えると[5]、ニート比率は0.14%または0.10%です。
■ ルーマニア(2002年平均)
表5 ルーマニアのニート人口 (単位:千人)
| 総数 | ? | その他 | |
| 人数 | 2,338.4 | 1,998.0 | 340.4 |
http://www.insse.ro/cms/files/RPL2002INS/
vol5/graphics/gr19.htm により作成。
ルーマニアの非労働力人口のうち、学生、退職者、家事従事者を除いた人口です。?は、原文では "supported" となっていますが、私には何のことか分かりません。
その数230万人超ですが、?を除くと、34万人ほどになります。ルーマニアの人口は2,117万人(2002年)なので[6]、?を含めたニート人口比率は11.0%、除いたニート人口比率は1.60%です。
■ むすび
このニート人口の推計には、「方法」のところでお話したように無理があるので、あくまで参考程度にとどめてください。
[注と参考文献]
いずれも、最終アクセスは2008年6月26日。
[1] 厚生労働省編『平成19年版 労働経済の分析』、28ページ、
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/
07/dl/01-01.pdf
厳密には、「ニート」ではなく、「若年無業者」という言葉が用いられています。
[2] 統計局ホームページ
http://www.stat.go.jp/data/
jinsui/2007np/index.htm
[3] Website on Census of India
http://www.censusindia.gov.in/Census_Data_2001/
National_Summary/National_Summary_DataPage.aspx
[4] National Bureau of Statistics Tanzania Official Website
http://www.nbs.go.tz/NationalProfile/
AgeSexDistribution/NATPROF5yr.xls
[5] Department of Statistics- Jordan
http://www.dos.gov.jo/sdb_pop/sdb_pop_e/
ehsaat/alsokan/2.htm
[6] NATIONAL INSTITUTE OF STATISTICS, ROMANIA
http://www.insse.ro/cms/files/RPL2002INS/
vol5/graphics/gr01.htm
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コメント
- ルーマニアの"supported"は、何らかの形で支援を受けている人の数じゃないでしょうか。
なんらかというのは、公的支援(いわゆる日本で言う生活保護のようなもの?)や私的支援(親や親族による扶養?)の事を指すのではないかなと思います。
確証は持てないのですが・・・
- まるさん、ご指摘ありがとうございます。
- 細かいところまでご覧になってくださり、嬉しいです。"supported" という語からすると、そういう人たちが想像できそうです。
この"supported"に分類された199万8000人を性別に見ていくと、男性は106万2100人、女性は935.9万人です。
それにしても、199万8000人というのは大きな数です。ルーマニアの国勢調査のページによると、家事従事者が164万7400人ですから、それよりも大きいことになります。



