仕事を欲しながら、職探しをしない人

米国労働省の Monthly Labor Review という雑誌?に掲載された論文を読んでいました。[1]

仕事を欲しながら、職探しをしない "hidden unemployed"(隠れた失業者)とも呼ばれる人たちについての論文です。

こうした人たちをアメリカの労働経済学者たちは "discouraged workers" と呼んできました。"discouraged" は「やる気(ここでは求職意欲)をそがれた」といった意味です。

近年その定義が見直され、新たに "marginally attached workers" というグループが定義されました。これは、仕事を欲し、仕事があれば就くことができ、過去1年に仕事を探したけれども、現在は職探しをしていない人たちのことです。

新定義では先ほどの"discouraged workers" は "marginally attached workers" の一部になり、就くことができる仕事がない、仕事を見つけることができなかった、必要な学校教育・技能・経験が欠けている、職場で何らかの差別を感じたといった理由により、仕事を欲していながら職探しをしていない人と再定義されました(1998年の論文に書かれてあったことなので、もしかしたら現在は違うかもしれません)。

論文ではそうした定義の変化と、それぞれのグループがどの程度労働力人口に近い存在であるかが分析されています。細かい分析で、面白いです。

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「仕事を欲している=職探しをしている」と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、ここでは両者は区別されています。この点は重要です。

"marginally attached workers" や "discouraged workers" は日本で言うニートに近いです。内閣府は、ニートを、就業を希望しながらも職探しをしていない「非求職型」と、そもそも就業を希望していない「非希望型」に分けていますが、[2] この分類をもとに言うと、先ほどの"marginally attached workers" や "discouraged workers" は 「非求職型」で無業の人たちということになります。

"marginally attached workers" は日本では何と訳されているのか分かりません。「縁辺労働者」という言葉ならありますが、これは似て非なるものです。

"discouraged workers" は、日本では「求職意欲喪失者」「就業意欲喪失者」「ディスカレッジドワーカー」などと訳され、「ニート」という言葉が広まる以前から、労働経済学の分野ではある程度知られていたようです。「求職意欲喪失」「就業意欲喪失」というと、本人が勤労の尊さを知らないとか、我慢や根性が足りないとか、親に甘やかされて育ったなどと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、もとの "discouraged workers" には、労働市場の問題により求職意欲をそがれてしまったというニュアンスを感じます。

[1] Monica D. Castillo, "Persons outside the labor force who want a job," Monthly Labor Review, Vol. 121, No. 7, July 1998, pp. 34-42.
[2] 内閣府「若年無業者に関する調査(中間報告)」、2005年。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/shurou/chukan.pdf
[最終アクセス2008年7月3日]

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