ニート引きこもりJournal

(元)当事者のブログ。2005年より。

失業と幸福

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Clark, A. E. (2003), “Unemployment as a Social Norm: Psychological Evidence from Panel Data”,. Journal of Labor Economics, Vol.21, No. 2, pp. 323-351.

労働経済学では著名な Journal of Labor Economics という雑誌に掲載された論文です。インターネットで無料で読むこともできます。特に技術的な部分で分からないところもあったのですが、大意はだいたい読み取れました(…と思うのですが)。

失業と社会規範に関する計量経済学的な分析です。個人の効用(満足度)は社会規範に依存するとしています。そして、個人の効用を客観的に数値化するために、GHQ-12という、12の質問項目からなる精神健康調査 General Health Questionnaire を用い、これを「幸福(well-being)」として、効用の代わりの概念として用いています。

失業と幸福の関係の分析が中心で、例えば、周囲に失業している人が多いと、働いている人の幸福度はより低くなるのに対して、無職の人の幸福度はより高くなる等のことが明らかにされています。

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社会規範、効用、幸福の話は、私には難しいです。社会規範は経済学的にどう定義できるのか?効用の代わりに幸福を GHQ-12という尺度で測ることはできるのか?…等々。もしかしたら、このあたりのところは、学者の間でも議論が分かれかもしれないとも思うのですが、定かではありません。

失業と幸福についてのくだりは、計量経済学の技術的な部分を除けば、分かりやすいです。学際的で、経済学者の仕事か、もしかしたら心理学者の仕事になるかもしれませんが、日本でもこういう実証研究があれば見てみたいと素朴に思います。

経済学者の間では、一部で幸福に関する研究が進んでいるようで、今回の論文はそうした分野の文献にも引用されているようです。日本でも翻訳書が発売された『幸福の政治経済学』も、その一つです。ちなみに、『幸福の政治経済学』の原題は Happiness and Economics です。 Well-being and Economics ではありません。

経済学の著名な学術雑誌に掲載された内容で、学術的な論評をするのは私には難しく、このような記事になってしまいました。

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