引っ込み思案児への早期介入

ニート状態にある人の多くは対人コミュニケーションの苦手意識を持っており、このことが、ニートの若者が就労をする上で障害になっているのではないかと考えられます[1]。

とすると、ニートの増加を未然に防ぐには、子供のコミュニケーション能力への対策が重要になりそうです。しかし、実際に行われている対策は、勤労観・職業観の育成、キャリア教育、職場体験といったところが中心で、子供のコミュニケーション能力への関心は、わりあい低いのではないでしょうか。

※ もちろん、ニート増加の原因を必ずしも若者に全て帰することはできないでしょう。

■ 引っ込み思案児

先日もお話しましたが、教育心理学の世界などでは、引っ込み思案の子供が問題にされることがあります。引っ込み思案児には「人前に出ることができない、人前で話ができない、集団になじめない」といった特徴があり[2]、将来の不適応を引き起こす可能性が示唆されてきました[3]。

その引っ込み思案が改善されないまま成長して社会不適応を起こした若者がニートである…と言うと、根拠もないのに言い過ぎだろうとは思いますが、少なくともニートの一部にそうした人がいる疑いはあるだろうと私は見ています。

こうした引っ込み思案児については、「社会的スキル訓練(SST)」を導入する研究報告が多いです。社会的スキルとは、「社会的・対人的な場面において円滑な人間関係を成立させ、いわばうまく付き合っていくことができるために必要な社会的・対人的技術」を指します[4]。子供は遊びなどを通じて自然に社会的スキルを身につけていくものでは必ずしもなくて、特に集団になじめない引っ込み思案児には、このような訓練が必要な場合があるのです。

引っ込み思案の研究成果は、ニート増加の防止を考える上で興味深く、もっと注目が集まってもよいのではないかと私は考えています。しかし、引っ込み思案の研究の蓄積は、少なくとも日本ではほとんど見つかりません。目立たない問題行動なので関心が薄いのでしょうか。引っ込み思案児には早期介入が重要であり、不登校やひきこもり、ニートといった、問題行動が目立つかたちになってからでは遅いのではないかと思うのですが。

[注と参考文献] [1] 厚生労働省「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書」http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/06/h0628-1.html、最終アクセス2008年9月19日。
[2] 坂野雄二『無気力・引っ込み思案・緘黙』、黎明書房、1989年、19ページ。
[3] 貝梅江美、佐藤正二「引っ込み思案行動に対する集団社会的スキル訓練の効果」『日本教育心理学会総会発表論文集』、第42巻、412ページ。
[4] 坂野雄二『無気力・引っ込み思案・緘黙』、黎明書房、1989年、11ページ。

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