中卒者の背景

高校に進学しない中卒者は、就職面で、高卒や短大・高専卒、大卒者等に比べると不利のように思われます。

この中卒者ですが、いったいどういった背景を持った人たちなのだろうかと考えさせられたのは、場面緘黙症という、情緒障害に関する研究を読んだことがきっかけです。

この研究によると、かつて京都市児童福祉センターが治療的にかかわった場面緘黙症児34名のうち、高校(養護学校高等部含む)に進学した者は25名で、高校進学率は73.5%です(南ら, 1987)。1987年の高校進学率(「学校基本調査」によると90%超)に比べると、低い水準と言えます。

緘黙のほか、日常生活を営む上で何らかの問題を抱える人たちは、もしかすると高校に進学できず、就労面で不利となるリスクが高くなるのではないかとも思えてきます。

■ 児童養護施設で生活している子供の高校進学率が低い

ある本には、児童養護施設で生活している子供の高校進学率が80%台と書かれてあります(古谷, 2005)。ただし、この80%という数字はどういう調査によるものかまでは、その本には書かれてありません。

■ ニューカマーの高校進学率が低い

それ以上に高校進学率が低いのは、1980年代以降に増えたニューカマー(アジア、南米地域を中心とする諸外国よりさまざまな事由・経緯のもと来日した外国人子弟。在日コリアンは除く)の子供たちで、その高校進学率は調査によって差はあるものの、40~65%程度という水準です(金井, 2004)。

■ 中卒者はどのような背景の人たちか?

もちろん、中卒者は、情緒障害者や児童養護施設出身者、ニューカマーの人たちだけでなく、様々な人たちがいるのでしょう。

実際のところ、中卒者はどのような背景を持った人たちなのだろうかと思い、調べてみたのですが、手がかりとなりそうな資料はなかなか見つかりませんでした。唯一見つけたのは、1970年代の愛知、岐阜の調査です。家庭環境の影響が大きいことが分かりますが、40年近く前の調査です。

高校不進学者発生のメカニズム : 愛知県・岐阜県の事例研究
(新しいウィンドウで開く)
↑ 国立情報学研究所のサービスです。

確かなことは分かりませんが、高校に進学できるかどうかは、環境や条件といったものの影響も大きそうです。残念ながらそうしたものに恵まれなかった人たちは、高校に進学できず、就労面で不利になるリスクが高いのでしょう。もっとも、だからといって一概に中卒が悪いと言うつもりもありません。

[文献]

◇ 金井香里 (2004)「日本におけるマイノリティの学業不振をめぐる議論」『文部科学省21世紀 COE プログラム Working Paper』 10, 東京大学大学院教育学研究科基礎学力研究開発センター.
◇ 古谷誠 (2005) 『優子ものがたり-児童養護施設で生活する子どもたちの成長の記録』, 文芸社.
◇ 南陽子, 門慎一郎, 西尾博, 大塚隆治, 梁川恵, 奥田里美, 片岡朗 (1987). 「選択緘黙の社会適応に関する研究」 『安田生命社会事業団研究助成論文集』 23(1), 109-129.

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