不登校は日本だけでの問題ではない。なのに、ひきこもりは…?

不登校は日本だけではなく、海外でも問題になっています。実際、英語圏には、日本の「不登校」に相当する "school refusal" という言葉があります。

一方、ひきこもりはほとんど日本だけの問題と一般に言われています。

私には、これが素朴に不思議に感じます。

* * * * * * * * * *

海外の不登校とは、どのようなものなのでしょうか。例えば、これはアメリカの例ですが、ある論文には次のように書かれています(Fremont, 2003)。

学校に出席することについての深刻な感情的苦しみ; 不安やかんしゃく、うつ、身体症状を含むこともある。

Severe emotional distress about attending school; may include anxiety, temper tantrums, depression, or somatic symptoms.

日本の不登校やひきこもりと大差ないように思われます(発達障害や統合失調症が視野に入っていないのが私には気になるのですが)。

ならば、

社会に参加することについての深刻な感情的苦しみ; 不安やかんしゃく、うつ、身体症状を含むこともある」

という状態の人がアメリカにも数多くいても、おかしくなさそうに私には思えてきます。ですが、それがほとんどいないというのですから、私には不思議です。

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色々情報を探していたところ、星野仁彦氏がアメリカの不登校について興味深いことを述べているのを発見しました(星野、2006)。

現在日本で増加しているニートの中には、不登校が長びく中で引きこもっている人が少なくありません。不登校の発症率は日本と大差ない米国では、このような長期間の社会的引きこもりやニートがほとんど見られないことには、次のような大きな理由があります。

米国では不登校を、子どもの「教育を受ける権利の喪失」と考え、登校の早期再開を社会の義務だと考えているからです。

「子どもが学校に行きたがらないから」という理由で登校を積極的に働きかけなかったり、専門家への紹介を怠ると、保護者や学校はネグレクト(児童虐待の一種)と判断され、両者に法的な措置がとられます。

アメリカに限ってみると、不登校の児童生徒は数多くいるにもかかわらず、ひきこもり者がほとんどいないのは、これである程度説明できそうです。

ただ、ひきこもり者の全てが、不登校が長びいてそうなるとは限らないはずです。清田晃生氏らの文献的検討によると、日本のひきこもり経験者のうち、不登校経験または学校に関連するものがきっかけでひきこもった者の割合は、40~60%程度だったそうです(清田, 2008)。日本では、不登校とは直接無関係にひきこもりに至った者も相当数いそうですが、アメリカにはそうした者はいないのでしょうか。

もしかすると、海外には、短期的な不登校の児童生徒が生まれる環境はあっても、ひきこもり者が生まれる環境はないのかもしれません。親元で暮らす子供が、ある程度の期間学校に通わなくなるという状態は起ることがあっても、星野氏が言うように(あくまでアメリカの例ですが)保護者は不登校が長期化しないよう手を打たざるを得ないため、子供はひきこもりにはなりにくい。子供が成人すると、特に欧米では日本と違って子供は親元を離れる傾向が強いため、ひきこもりになりにくいとか(社会になじまない人が、親から独立後、ひきこもらずに働くか、浮浪者になるかは分かりませんが)。

そもそも、ひきこもりはほとんど日本だけ、という理解が間違っているのではないかとも思えてきます。実は海外にもひきこもりは存在するが、報告がないだけではないか、と。

いろいろ書きましたが、結局よく分かりません。

[文献]

◇ Fremont, P.W. (2003). School refusal in children and adolescents. American Family Physician, 68(8), 1555–1561.
◇ 清田晃生, 宇佐美政英, 大隈紘子. (2008)「地域連携システムによるひきこもり支援と疫学的検討」 『思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究』 (pp. 95-101). 厚生労働省科学研究費補助金こころの健康科学研究事業平成19年度総括・分担研究報告書.
◇ 星野仁彦(2006)『気づいて!こどもの心のSOS』, ヴォイス.

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