精神疾患と労働

メンタルヘルス政策と経済学に関する The Journal of Mental Health Policy and Economics という学術雑誌があります。

9月30日に発行された最新号では、精神疾患を持った人は労働参加率が低いとか、失業率が高いとか、年収が低いといった、オーストラリアや中国の実証研究が2件掲載されています(Cornwell ら 2009; Lu ら 2009)。

もちろん、精神疾患を抱えながらも、就労を果たし高い年収を得ている人もいることでしょうが、全般的な傾向としてはこういうことらしいです。

私はこれらの論文の抄録しか読んでいないので大きなことは書けないのですが、興味深い研究と見ています。精神疾患が労働市場への参加に不利な影響を与えているであろうことは容易に想像できますが、実証分析による裏付けが出たということに大きな意義があります。また、メンタルヘルスの問題は経済問題とも関わりがあるという事実からは、政策的含意も導き出せそうです。

ただ、私は本文を読んでいないので、この論文で言う精神疾患(Mental illness)が何を差すのかが分かりません。統合失調症やうつといった狭義の精神疾患か、広義の精神疾患も含むのか。

ニート等支援機関の報告の中には、精神疾患や発達障害の診断を受けた、あるいはその疑いがある利用者が少なくないというものもあります(財団法人 日本生産性本部, 2009)。以前、「教育経済学の知見を導入することが、ニート問題の考察に大いに有用であると思われる」(菅原, 2005)という主張を見たことがあるのですが、上記の研究のような Mental Health Economics ないし Economics and Mental Health(日本語に訳せば「メンタルヘルス経済学」?)の知見の導入も、ひょっとしたら面白いかもしれないと思います。

[文献]

◇ Cornwell, K., Forbes, C., Inder, B., & Meadows, G. (2009). Mental illness and its effects on labour market outcomes. The Journal of Mental Health Policy and Economics, 12(3), 107-118.
◇ Lu, C., Frank, R.G., Liu Y., and Shen,J. (2009). The impact of mental health on labour market outcomes in China. The Journal of Mental Health Policy and Economics, 12(3), 157-166.
◇ 菅原亮(2005)「メディアにおける「ニート」像 : 雑誌記事の分析から」『日本教育社会学会大会発表要旨集録』第57号、197-198ページ。
◇ 財団法人 日本生産性本部(2009)『地域若者サポートステーション事例集 平成20年度版』

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