失業期間の長さと(再)就職率

労働経済学で、失業期間と再就職率の関係について、「期間依存」(duration dependence)という言葉があると知りました。

失業期間が長引くほど再就職率が低下(増加)していると、「負(正)の期間依存」があると呼ばれるそうです。

直感的には、失業期間が長ければ長いほど、再就職は難しくなると私などには思えます。実際、そうした分析結果もあるようです。どうして失業期間の長さが再就職率の低さにつながるかというと、これも様々な説明が労働経済学者等によりなされています。例えば、長期失業者は、失業期間中に生産性が低下したからというのが一つの説明です。他に、長い期間失業していたということは、その人が生産性が低いことのシグナルになり、企業はそうした人の採用をより控えるようになるからという説明もあります(スティグマ効果)。このスティグマ効果は、企業がその就職志望者のことをよく知らないことが前提です(情報の非対称性)。

ただし、小原(2004)によると、本当に失業期間と再就職率の間にこのような関係があるかどうか等々については、見解の一致を見ていないそうです。

特に、弓場(2004)によると、スウェーデンでは、失業期間が長引くほど、再就職率が増加するという分析結果ばかりなのだそうです。弓場氏は、「スウェーデンの場合には、職業訓練といった伝統的かつ大規模な労働市場政策が実施されており、さらに、これらの雇用対策プログラムは失業期間が長いなど厳しい状況に置かれている人にほど手厚いために、そのような分析結果になるのではないかと推測される」としています。



ところで、ニート、特にひきこもりの人が、就労する場合はどうなのでしょうか。 * * * * * * * * * *

ひきこもり、ニート生活を送っていた間は、当然、履歴書には空白期間として残ることになります。この空白期間が長ければ長いほど、就労が難しくなるという話を聞くことがあります。私も直感的にそうではないかと思います。上の話にならって言うと、第一に、ひきこもり、ニート生活では社会で人と接する機会が少ないため社会性が落ちるとか、生活習慣に乱れが出てくるとか、ひどい場合になるとうつになるとか、そうした就労以前の問題が出てきます(生産性の低下)。第二に、そうした生活による履歴書の空白期間は、一般に企業にはマイナスに評価されるでしょう(スティグマ効果)。ただし、労働経済学者が実証分析でこうしたことを証明したという事実があるかどうかは知りません(おそらくないだろうと思いますが)。

地域若者サポートステーションや若者自立塾など、ひきこもりやニートの人を対象とした、自立支援施設があります。こうしたものを利用している人は、どうなのでしょうか。サポステや自立塾等を利用している間は当然無業期間がさらに長引くことになりますが、これらの施設を利用することにより、就労の可能性をどれだけ高めることができるのでしょうか。先のスウェーデンの例とは少し違いますが、しっかりした自立支援を受けることができれば、過去の空白期間こそどうにもならないかもしれませんが、社会性や生活習慣など就労以前の問題をなんとかすることにより、もしかしたら就労の可能性は高めることができるかもしれないとは思います。

長々と駄文を連ねてしまいましたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

[文献]

◇ 小原美紀(2004)「雇用保険制度が長期失業の誘引となっている可能性」 『日本労働研究雑誌』46(7)、33-48.
◇ 弓場美裕(2004)「スウェーデンの政策評価」伊藤実、小倉一哉、原ひろみ、堀春彦、勇上和史、弓場美裕『労働市場政策の効果に係る定量的評価の欧米における先行研究についての調査』
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2004/L-4.html

[その他参考にしたもの]

◇ Roldán, B.V. (2007). Aggregate implications of employer search and recruiting selection. Retrieved from http://troi.cc.rochester.edu/~bvillena/aggregate_implications.pdf



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