ニートは無気力じゃない!
私がリンクを追加する時に記事の中でご紹介しているのは、あくまでサービスのつもりです。ですから、見返りは期待していないのですが、お返しをいただくのは嬉しいです。
それにしても、思いもがけず大きな書体で派手にやられたので、思わず笑ってしまいました。何はともあれ、よろしくお願いしますね。
[ 本題 ]
「『ニート』という言葉はあたかも格好いいものかのような印象を与えて好ましくない。『ニート』ではなく『無気力者』と言うべきではないか。ある大学教授は『無気力症』と訳している。」
平成17年7月20日(水)に行われた、文部科学省の中央教育審議会スポーツ・青少年分科会(第31回)で、上のような発言をした出席者がいたそうです(せっかく「安心して訪問できる」と宣伝していただいたのに、こんな文章を載せて恐縮ですが…)。
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/
chukyo5/gijiroku/001/05092001.htm)
前段の「『ニート』という言葉はあたかも格好いいものかのような印象を与えて云々」という人は多いですね。みんなの人気者、爆笑問題の太田光氏も似たようなことを言っていました。
私は洋書や英字新聞を読んだりして英語と日常的に接していますが、「ニート」という言葉に格好よさなんて全く感じないんですけれどね。ですが、そう感じる人が日本語を母国語とする人には少なくないようです。
* * * * * * * * * *
さて、今日お話したいのは後段です。
「『ニート』ではなく『無気力者』と言うべきではないか。ある大学教授は『無気力症』と訳している。」
この発言をした人物や「無気力症」と訳した大学教授は、ニートは無気力で求職意欲すらないのだろうなどと考えているのかもしれません。このお二人に限らず、同じような考えを持っている人は多いものと思われます。
しかし、私の知る限り、教育、職業訓練、雇用のいずれにも参加していない若者がみんな無気力だということを示す証拠は全く見つかりません。ニートの中には、働こうという意欲を持っている者が相当数含まれています。また、求職活動をしていないニートの中にも、健康上の理由など、本人の気力のあるなしとは関係ない理由による者がかなりの数にのぼっており、ニートを「無気力」と一概に決め付けることはできません。
ニートには、求職意欲がある者とない者がいる
ニートの定義というのはまだ日本にはありません。論者によってまちまちです。ただ、ニートというのは、not in education, employment or training (NEET) という、イギリスから来た言葉です。ここから、ニートは教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない若者、という点では、概ね見解の一致が見られます。特に雇用問題について使われる言葉です。
教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない状態の若者の中には、
a) 就職に対する意欲がなくて参加しない者
b) 就職に対する意欲があるのに参加しない者
の二通りが考えられます。
実際、内閣府の青少年の就労に関する研究会」(委員長:玄田有史東京大学助教授)がまとめた「『若年無業者に関する調査(中間報告)』では、世に言うニートを「非求職型」(就職希望はあるが求職していないタイプ)と「非希望型」(そもそも就職希望すらないタイプ)の二通りに分類して位置付けています。
「タワケ!仕事に就きたいと思っているのに求職活動しないなんてことあるわけにゃーでよぅ!」という声が、どこからか聞こえてきそうです(ちなみに、これは名古屋弁です)。でも、本当にそうなのでしょうか。
求職意欲があるニートとないニートの数
(1)若年無業者に関する調査(中間報告)
まずご紹介しますのが、先述の『若年無業者に関する調査(中間報告)』です。このブログで何度も取り上げた資料です。早く最終報告を読みたいところです。 はなから就職するつもりのない「非希望型」と就職したいと思っているが具体的な行動を起こしていない「非求職型」の数がどれぐらいにのぼっているのかが明らかになっています。
表 非求職型と非希望型ニート人口とその推移(千人、%)
| 非求職型 | 非希望型 | |
| 2002年 | 425.7(50.2) | 421.5(49.8) |
| 1997年 | 291.1(40.6) | 425.4(59.4) |
| 1995年 | 256.6(38.4) | 411.1(61.6) |
2002年現在では、非求職型と非希望型の数は、それぞれほぼ同数のようです。仕事に就きたいと思っているのに実際に活動していないニートが、全体の半数を占めています。
年ごとに見ると、「働く意欲がない」などと言われがちな、はなから就職を希望しない「非希望型」の数は、ほとんど変化がありません。これに対し、増加傾向にあるのは、意欲がないのに行動を起こさない「非求職型」です。
ちなみに、「非求職型」に、なぜ求職活動をしないのか理由を聞いてみたところ、次のような回答を得ました。以下に示すのは、2002年のデータです。
★ 病気・けがのため 10.4万人
★ 探したがみつからなかった 5.3万人
★ 急いで仕事につく必要がない 4.9万人
★ 知識、能力に自信がない 4.2万人
★ 希望する仕事がありそうにない 4.1万人…etc.
ダントツトップの「病気・けがのため」は、ニート問題ではなぜか軽視されているのが気になります。調査によると、病気やけがを理由に求職活動をしていない若者の数が急増しており、深刻な問題です。最近よく「ニートの数が増加している」などと報道されていますが、その増加分の中には健康上の理由による者が相当数含まれていることに、もっと注意が払われるべきです。
(2)若年者のキャリア支援に関する実態調査
UFJ総合研究所が、2003年に厚生労働省の委託を受けて、「若年者のキャリア支援に関する実態調査」を行いました。その中で、無業者の求職活動体験に関する資料があります。
[若年者の求職活動体験]
★ 求職活動をしたことは一度もない 20.4%
★ したことがあるが、現在はしていない 38.3%
★ 現在、求職活動中である 41.2%
これを冒頭の「無気力」という観点で見ると、「求職活動をしたことは一度もない」あたりが100%無気力、「したことがあるが、現在はしていない」あたりが50%無気力だろう、という声がどこからか聞こえてきそうです。
ただ、求職活動をしていない理由はさまざまのようです。例えば「求職活動をしたことは一度もない」と答えたものにその理由を聞いたところ(複数回答)、次のような回答を得ました。
★ 人付き合いなど会社生活をうまくやっていく自信がないから 33.6%
★ 健康上の理由 29.3%
★ ほかにやりたいことがあるから 28.3%
★ 能力・適正にあった仕事(向いている仕事)が分からない 25.4%
★ 自分の能力・適正が分からないから 22.6%…etc.
となっています。例えば「健康上の理由」や「ほかにやりたいことがあるから」という理由でニート生活を送っている若者を「無気力」と断じるのは、いくら何でも無理があります。他の理由で求職活動をしていない若者も、「無気力」とは言いきれません。ニートを一概に無気力と言うことはできなさそうです。
(3)埼玉県の調査
2005年11月16日の記事「ニートの4人に3人は就職を希望」の中で、埼玉県の「若年就業者意識調査」をご紹介しました。記事のタイトル通り、就職を希望しているニートの割合は4人に3人だそうです。
ニートは本当に無気力か?
ニートには、就職を希望しているタイプとそうでないタイプがいます。両者の割合は統計によって異なりますが、どちらも相当数いるようです。
まず、ニートが本当に無気力だとしたら、就職なんて希望しないはずです。ですから、就職を希望するタイプのニートが無気力とするのは、ちょっと違うと思います。
また、就職を希望しないニートの中にも、「健康上の理由」など、本人の気力のあるなしとは全く関係ない理由による者の割合が少なくありません。
ニートを「無気力症」と断じることには、強い疑問を感じます。
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コメント
- 久しぶりのコメントです。
- 緘黙症やひきこもりの記事も見ていますが、いつも勉強になります。
英語とよく接しているだなんて、尊敬です!
『ニート』は格好いいというよりかは、ただ流行の言葉なだけの気がしますね。
自分は、それと同時に見下すニュアンスも感じたりもしますが。
言葉って、使い方によって意味合いも変わってきますからね。
それにしても、
>『ニート』ではなく『無気力者』と言うべきではないか。ある大学教授は『無気力症』と訳している。
心理状態まで限定してしまうだなんて、なかなか強引・・・^^;
でもきっと、世間のニートのイメージってこんな感じなんだろうなぁ。。。
- お久しぶりのコメント、ありがとうございます。
- このブログで最初にコメントをくださったyusaさん、よく覚えております。(^-^)ひきこもりや緘黙症の記事まで読んでくださっているということで、嬉しいです。
ニートのことも、ひきこもりのことも、緘黙のことも、私もまだまだ勉強中の身です。英語も、恥ずかしながらまだまだ「下手の横好き」のレベルです。(^_^;
>『ニート』は格好いいというよりかは、ただ流行の言葉なだけの気がしますね。
うーん、なるほど。「ただ流行の言葉なだけ」ですか。もっともです。
私も、ニートという言葉には、どこか見下すようなニュアンスを感じています。このブログで自分のことをニートと名乗ってはいますが、格好いいなどとは露とも思っていません。むしろ、働いていないことを公にして恥ずかしいと言うのが本音です。しかし、営業戦略上、使っています。
NEET問題の元祖・イギリスでは、NEETという言葉は日本ほど流行っていないそうですが、そういう侮蔑的な意味合いを含んではいないそうですね。国の事情が違うので一概に比較はできないのですが。
個人的には、ニートは無気力だとか、そういった偏見が、ニートの社会参加を阻む大きな障害の一つになっていると思っています。
- 書体の調整が効かなかったようでスミマセンでした(^-^;)
- こういうデータはとても参考になります。
「安心して訪問できるサイト」には変わりありません。
ニートに関してですが、「健康上の理由」で求職活動が
できない人を一緒に分類してしまうことには、考えさせられる
ものがあります。
例えば、「前の会社を健康上の理由で辞めた」なんて言ったら
雇ってくれる会社なんて殆どないですよね。日常生活に支障の
ない病気でも、「診察のために月1回早退する必要がある」
なんて言ったら不採用になってしまう。
こういう差別を見過ごしておいて、識者が単に「若者にやる気
がないだけだ」と考えているとしたら悔しいです。
- 崖っぷちニートさんのブログから、アクセスたくさん頂きましたよ!
- 崖っぷちニートさん、コメントありがとうございます。
書体のことは少しびっくりしましたが、(^_^; おかげさまで、昨日は崖っぷちニートさんのブログから、たくさんアクセスをいただきました。(^-^)
病気とニートの関わりについてですが、ニートという言葉が広まるきっかけになった玄田有史、曲沼恵美両氏の『ニート』では、ニートの定義の中に健康上の理由による者は除かれてありました。
それが、いつのまにか内閣府や厚労省の定義には(正確には「若年無業者」などの別の表現なのですが)、健康上の理由による者も含まれています。内閣府の文書などは、玄田氏が委員長を務めた研究会がまとめたものなんですけどね。
ですから、内閣府や厚労省が発表した85万人とか64万人とかいう数字の中には、病気の者も含まれているということに注意する必要があります。厚労省のニート人口の算出方法などは、非労働力人口から、家事や通学をしていない者を差し引いたという、本当にただそれだけです。この中には、重度の障害者なども含まれているかもしれません。
ちなみにイギリスの場合、最初にNEETの問題を扱った Bridging the Gap という報告書を見ていますと、病気だろうが心身に障害をもっていようが、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していなければ、NEETに含めています。病気や障害者の問題は実にはっきり書かれていて、こういった人たちが社会参加できるようにするための対策まで、きちんと言及されています。これはおそらく、イギリスでは、NEETは社会的に排除されて社会参加できない若者たちと捉えられているからだと思います。そういった若者たちも排除せずに社会参加にもっていこうという動きがイギリスにはあるようです。
日本の場合は、ニートの定義からして曖昧で、病気の人の問題は位置付けがはっきりしないというか、見過ごされているというか、どうもよく分かりません。
私が以前付き合っていた友達はメンタルヘルスの問題で大学を中退した過去があり、働きたくても、履歴書の問題でうまくいかないと嘆いていました。病気を持っていようが障害を持っていようが、働きたいという希望を持っている人たちができるだけ社会参加できるように、行政も考えてほしいところです。
(スミマセン…長文になって)
- 管理人のみ閲覧できます
- このコメントは管理人のみ閲覧できます
- コメントくださった方、ありがとうございます。
管理者のみ閲覧のコメントということで、
内容について触れることは差し控えますが、
大切に拝読致しました。
- こうやってイギリスの対策と比べると、日本の対策の問題点が見えてくるんですね。イギリスのNEET問題については知識がないのでとても勉強になります。メンタルヘルスの問題も日本ではまだまだ理解されていないように感じますし・・・。それこそ、「無気力」という言葉で片付けられちゃいそうな気がします。
(追伸) 書体、見やすいように直してみました。
それから、ランキングのクリックもありがとうございます。



