ひきこもってるから精神疾患になるのかどうか

ひきこもりの多くが(広い意味での)精神疾患。そう言われると、精神疾患があるからひきこもりになるのかな、と漠然と思えてきます。ですが、逆に、ひきこもるから精神疾患になるのかなとも思えてきます。ひきこもりの多くが精神疾患という報道がなされた2010年5月ごろ、ネット上では両方の解釈をしている人を見かけましたが、どちらが正しいのでしょうか。

前回お話したとおり、この報道のもととなった研究報告の全文が今月厚生労働科学研究成果データベースで公開されました。そこには、はっきりこう書かれてあります(近藤ら, 2010)。

* 以下引用(72ページ)、太字強調は私によるものです *

本研究では、次年度の集計の際に診断名を変更または追加したケースがある場合は報告することにしているが、来談群184件のうち、支援経過中にI軸、II軸に新たな診断が追加されたケースはなかった。したがって、「ひきこもりが続くと精神医学的な問題が生じる」といった仮説は否定的であり、本研究で把握された精神医学的問題はひきこもりによって生じたものではなく、ひきこもりの原因となっている可能性が支持される。

* 引用終わり *

報道ではこの部分は伝えられませんでした。このため、「ひきこもるから精神疾患になる」という誤った解釈が一部で生まれてしまったようです。一次情報を確認することの重要性を改めて認識させられます。

ひきこもりが続いても精神医学的な問題が生じるわけではないとすると、私などには意外に思えます。ただ、少なくとも、発達障害については納得がいきます。発達障害には先天的なものが関係しており、ひきこもったから発達障害になるということはありません。


このあたりの話は、ひきこもり支援の必要性の議論に、若干の影響があるかもしれません。ひきこもりが長期化すると精神医学的な問題が起こり得るから長期化を予防すべしという主張に、不利な研究結果が出たからです。同様の研究は他にはないか、もしあれば、今回の研究と同じ結果が出たかどうか、気になります。

[文献]

◇ 近藤直司、清田吉和、北端裕司、黒田安計、黒澤美枝、境泉洋、富士宮秀紫、猪俣夏季、宮沢久江、宮田量治(2010)「思春期ひきこもりにおける精神医学的障害の実態把握に関する研究」 齋藤万比古『思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究』 (pp. 67-86) http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do

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