英ニート暴徒化の報道について

ロンドンの暴動について、MSN産経ニュースなどで、「ニート」の若者が暴徒化したなどという報道がなされました。私の周辺にもこのニュースについて語った人がいて、意外によく知られていると感じています。

ただ、誤解もあるようです。「ニート」といっても、イギリスで言うところの NEET と、日本で言うところのニートとは意味が違います。大きな違いの一つは、イギリスの NEET は、職探しをしている失業中の若者も含まれることです。今回の暴動が本当に「ニート」が暴徒化したものかどうかは私には分かりませんが、このあたりのところが気になったので、少し書いてみます。

■ イギリスで言う NEET の意味

イギリスの NEET は、Not in Education, Employment or Training の略で、文字通り、教育、雇用、職業訓練、いずれにもない若者のことを指します。[注1]特に、義務教育修了後の16~18歳の若者をもともとは指したのですが、もう少し年齢層を広くとって、16~24歳にすることもあります。

■ 日本で言うニートの意味

日本のニートという言葉は、イギリスの NEET からとったものです。ただ、意味が多少違います。

まず第一に、日本の場合、「教育、雇用、職業訓練、いずれも受けていない」という要件に加えて、「職探しをしていない」という要件が新たに加わる点です。このため、完全失業者、つまり仕事を探しているいわゆる失業者は、ニートとは区別されます。第二に、日本の場合、年齢層をさらに広くとって、16~34歳に限定していることです。第三に、家事従事者を除外している点です。年齢層を幅広くとっているため、特に専業主婦・主夫を区別するねらいからだろうと思います。

日本で言うニートは様々な意味で使われることがありますが、このあたりのところはほぼ共通しています。[注2]

■ 産経などの報道が言う「ニート」は、イギリス版 "NEET" のことでは

例の報道の場合、

「『ニート』という言葉は99年、英政府報告書で初めて使われた。就学も就業もせず、職業訓練も受けない若者を指す。英教育省によると、昨年第4四半期のニートは16~24歳人口の15.6%。2007年同期の13.1%から急増した。金融・経済危機の後遺症で英国では景気が低迷し、あるシンクタンクは今後5年間で同世代の失業者は120万人になると予測する」(木村, 2011)

という記述などから、ここで言う「ニート」は、イギリス版 NEET のことと窺われます。つまり、仕事を探している失業者も含まれるわけです。ところが、上記のような日英の意味の違いなど知る人は少ないですから、これは誤解をする人が出ても不思議ではありません。

イギリスの NEET と日本のニートでは発生の背景も違うので、ごっちゃにはしない方がよいと思います。

[注1] 初出は、1999年の英政府報告書 Bridging the Gap: New Opportunities for 16-18 years olds not in education, employment or training。ブレア政権当時の労働政策から生まれた言葉です。

[注2] ニートの代表的な定義としては、厚労省「労働経済の分析」に毎年見える、「15~34歳の非労働力人口 のうち、家事も通学もしていない者」というものがあります。非労働力人口は、15歳以上人口のうち、就業者でもなく、完全失業者(仕事に就いておらず、仕事があればすぐに就くことができ、仕事を探す活動をしていた者)でもないものです。

[文献]

◇ 木村正人(2011年8月9日)「ニートの若者暴徒化 過当競争・景気低迷…根深い病巣」『MSN産経ニュース』http://sankei.jp.msn.com/world/news/110809/erp11080921200011-n1.htm

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