大人の緘黙症と、ひきこもりについて

ダイヤモンドオンラインの連載記事「『引きこもり』するオトナたち」で、5月と6月に、大人の緘黙(かんもく)症に関する記事が1回ずつ掲載されました。この記事には今でも反響があるようなので、私も少し思うところを書いてみます。

といっても、私は緘黙症の専門家でもなんでもなく、緘黙症に関するサイトを6~7年続けてきた者にすぎません。今回書く内容も思いつきのようなものの羅列で、大したものではありません。

■ 緘黙症とは何か

○ 緘黙症は、話す能力があるのに(器質的障害はない)、話すことができない状態を言います。それも、単なる引っ込み思案や内弁慶といったレベルではなく、何か月や何年といった長期間、こうした状態が続きます。一つの不安障害ともされます。

その多くは、特定の場面で話せない場面緘黙症(選択性緘黙)ですが、稀に全ての場面で話せない全緘黙症の人もいます。家では普通に話せるのに、幼稚園や学校に行くと、どうしても声が出なくなってしまうというのが緘黙症の典型例です。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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■ 大人の緘黙症について

○ 緘黙症は子供の問題として扱われることがほとんどでした。このため大人の緘黙症が敢えて強調されているのだろうと思います。大人の緘黙症というと、子供の頃の緘黙症が成人期になってもなお持ち越されている場合が多くを占めます。

○ 大人の緘黙症は、学術文献や専門書などでは取り上げられることはほとんどありませんでした。ですが、ウェブ上では、当事者などの情報発信により、大人の緘黙症が国内外で話題になることが以前よりありました。ある米国の有力緘黙症支援団体(専門家も運営に携わっています)は、ウェブサイト上で、大人の緘黙症に関するページを設けたこともあります。

○ 2006年8月に、ダイヤモンド・オンラインの記事に登場する非営利の任意団体「かんもくの会」が設立されます。同団体が関わった日本特殊教育学会第48回大会における緘黙症シンポジウムの報告によると、「成人後に最も重篤な症状を引きずると考えられる当事者の存在が、その親たちが入会してきたことによって明らかになった(現在17名)」のだそうです(浜田ら、2011)。この事実を根拠にしているかどうかは分からないのですが、同団体は特に、大人の緘黙症や、いわゆる緘黙症の後遺症で悩む人の存在を強調しています。

○ 大人の緘黙症については、現段階では研究などが進んでおらず、分からないことが多いのではないかと思います。ウェブ上の情報も、どこまで信用できるか分かりません。成人期には緘黙症を克服している人もたくさんいて、いったいどの程度の割合の人が大人になっても緘黙症を引きずっているのか定かではありません。


■ 大人の緘黙症とひきこもりについて * * * * * * * * * *

○ 先ほどお話ししたシンポジウムの報告によると、かんもくの会の大人の緘黙症の当事者の多くは、「学齢期のいずれかの時点で不登校になり、緘黙症が治らないままずっと引きこもっている」のだそうです(浜田ら、2011)。緘黙症が長引いた子供が後にひきこもりになったという例は各種文献やウェブ上でも見かけることがありますし、そういう人もいるのだろうとは思います。

○ 厚生労働省のひきこもり研究班が行ったひきこもり実態調査によると、5か所の精神保健福祉センター・こころの健康センターに来談した184件のひきこもり例のうち(初回相談時16-35歳)、情報不足などの理由で診断保留となった35件を除く149件のうち、選択性緘黙と診断された例は1件でした(近藤ら、2010)。

○ 私が支援施設で出会った数十名のひきこもりの人(皆18歳以上)に限って言うと、緘黙症と見られる人にはお目にかかった覚えはありません。せいぜい、内気な人を見かけることがある程度です。もっとも、施設に通所するようなひきこもりの人は軽度の人かもしれませんし、今は単なる内気な青年に見えても子供の頃は緘黙症で悩まされた人も中にはいたのかもしれません。

○ 私は、緘黙症が大人になるまで遷延した人のうち、ひきこもりになった人はいるだろうと見ています。ですが、ひきこもり者のうち、緘黙症が遷延した人の割合は小さいだろうとも見ています。また、緘黙症でひきこもり状態にあるからといっても、単純に「緘黙症が原因でひきこもりになった」と考えるのは注意した方がよいかもしれないと思います。ひきこもりには、様々な原因が複雑に絡み合っている場合も少なくないと聞きます。

※ 今回は少し長めの記事でしたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。

[関連記事]

↓ 「ニートひきこもりJournal」内の記事です。
◇ 「『引きこもり』するオトナたち」の緘黙についての記事
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[関連サイト]

↓ いずれも、ダイヤモンド・オンラインへのリンクです。新しいウィンドウが開きます。
◇ 家では話せるのに学校・会社では話せない “大人の緘黙(かんもく)症”の知られざる苦悩
◇  大人しい優等生タイプを社会に出てから苦しめる “大人の緘黙(かんもく)症”のリアル

[文献]

◇ 浜田貴照、藤田継道、松田明子、奥田健次(2011)「緘黙症の特異性を踏まえた現実的解決策に向けて(自主シンポジウム49、日本特殊教育学会第48回大会シンポジウム報告)」『特殊教育学研究』48(5)、468-469。

◇ 近藤直司、清田吉和、北端裕司、黒田安計、黒澤美枝、境泉洋、富士宮秀紫、猪俣夏季、宮沢久江、宮田量治(2010)「思春期ひきこもりにおける精神医学的障害の実態把握に関する研究」 齋藤万比古『思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究』 (pp. 67-86) http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do

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