正規労働者と非正規労働者の賃金格差について
不勉強な私は、先行研究に十分に目を通していないので、経済学者の間でどう説明されているかほとんど知りません。知っている限りのこと(学部レベルの知識)で、考えています。
○ 生産性
市場メカニズムが有効に働いていれば、賃金は生産性によって決まるというのが最も基本的な考え方ではないかと思います。生産性の高い労働は賃金が高いですが、そうでない労働の賃金はそれなりです。生産性格差が賃金格差を生みます。
「生産性を反映しない賃金差があれば、市場メカニズムによって、割安な労働力の需要が増大し格差が修正され、長期的には賃金格差は生産性の格差に収斂していく」[1] ため、長期的には、同一生産性・同一賃金が実現するはずです。
ですが、何らかの理由により市場メカニズムが有効に働いていなければ、この限りではありません。
この生産性だけで説明できない賃金格差があるのであれば、他に何かあるはずです。
○ 仕事の属性
補償賃金格差というものがあります。3K(きつい、汚い、危険」)労働はその分かりやすい例ですが、こうした負担が多い仕事は、その分賃金が高くなります。仕事の属性によって、賃金も変わってくるということです。
○ 労働組合
労働組合の力も賃金に影響を与えます。非正規労働者は正規労働者よりも労組加入率が低いという話を聞いたことがありますが、どうなのでしょうか。
○ その他
その他にも、差別など、賃金格差は様々な要因によって決まります。
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正規労働者と非正規労働者の賃金格差は、これらのうちどれによって説明できるのでしょうか。
今月7日に発表された、OECD の "Economic Survey of Japan 2008" は、「正規労働者と非正規労働者の間の生産性の差は、賃金の差よりも小さい」 ([T]he difference in productivity between regular and non-regular workers is much smaller than the wage gap) [2] と分析しています。これが一つのヒントになりそうです。
[1] 永瀬伸子「非正社員と正社員の賃金格差の納得性に関する分析」『国立女性教育会館研究紀要』Vol.7、4ページ。
[2] OECD, "Economic survey of Japan 2008",
http://www.oecd.org/document/23/
0,3343,en_2649_201185_40375191_1_1_1_1,00.html
[2008 Apr 9]
子供の頃に感じた格差
彼のお父様は東京大学(大学院博士課程)のご出身で、国立大学教授という、社会的地位が大変高い職業に就いていたのです。お母様も大変聡明な方で、そのため、K君の家庭の文化レベルは非常に高かったのでした。家庭での会話も非常に知的で、テレビなどはほとんどつけず、つけるとしても、教養番組ぐらいしか見ていませんでした。そうした家庭環境で、K君のような賢い子が育つのは自然なことだろうと思われました。
一方、私の家庭環境は、K君のそれとは比べ物になりませんでした。知的な会話をしようものなら、「そんな、頭を使うような話するな!疲れる!」と親に叱られてしまいました。テレビはバラエティ番組ばかり見ていて、チャンネル権のない私が教養番組に変えようものなら、やはり叱られてしまったのでした。
■ 下層階級に留まらないために
私は、生意気にも、自分の家族のことを否定するようになりました。このような家庭環境に甘んじていては、このまま、下層階級の人間に留まってしまうと子供ながらに考えるようになったのです。これは、友達K君の影響もありましたが、学校の先生に啓発されたところも大きかったです。
そうして、家族とは距離を置き、勉強をし、本を読み、テレビを見るときも、自分にチャンネル権があるときは、できるだけ番組を選んで見るようにしました。家族からは「堅苦しい奴」「勉強ばっかり」と時に見下されもしました。
こうした傾向は富重家の伝統のようで、私の亡き父も、若い頃「こんな家族と一緒にいると馬鹿になる」と言い出し、一人で納屋にこもって勉強三昧の毎日を送っていたそうです。おかげで父は、富重家で初めての大学進学者となり、優秀なエンジニアとして活躍しました。父は若くして亡くなりましたが、生前に残した優れた学業成績とエンジニアとしての実績から、「富重家不世出の天才」とばかりに尊敬の対象とされるに至っています。
家族を否定したり馬鹿にしたりするのは道義的にどうかとも思うのですが、向上心は大事にしたいところです。私が言っても説得力がないかもしれませんが。
デンマークの労働政策の考え方「フレキシキュリティ」
「私たちがヨーロッパで発展させてきたこのフレキシキュリティのモデルは、日本のモデルになり得ると確信している」
“I am convinced that this model of flexicurity that we have developed in Europe could be a model in Japan” (Pilling, 2008)
EU の雇用担当委員で、元チェコ首相の Vladimir Spidla 氏の言葉です。
フレキシキュリティは、フレキシブルとセキュリティを組み合わせた造語で、フレキシブルな(柔軟な)労働市場と雇用の保障の確保を両立した労働政策の考え方です。
フレキシブルな労働市場とは、企業が労働者を解雇しやすく、かつ労働者が雇用されやすい労働市場のことです。フレキシブルな労働市場がなぜ大事かというと、労働力が経済環境の変化に対応して他部門に円滑に移動しやすくなるからです。特に近年のように技術の発達が目覚しい状況だと、これは重要になります。労働が他部門に移動する際には、時に教育、職業訓練が必要になります。
フレキシキュリティについては、独立行政法人の労働政策研究・研修機構のウェブサイトに分かりやすく解説されたコラムがあります。「ゴールデントライアングル」など、制度の詳しい説明はそちらに譲ります。
http://www.jil.go.jp/column/bn/colum072.htm
フレキシキュリティは、市場原理を生かして労働力の効率的な配分を図りつつ、雇用も保証しようとする、面白い考え方だと思います。
もともとフレキシキュリティ政策はデンマークで発展したのですが、近年は欧州委員会が同政策の推進を提案するなど、広くヨーロッパで注目を集めているようです。ただ、Vladimir Spidla 氏が言うように、このモデルを日本でも導入すべきかどうかは、私には分かりません。労働政策研究・研修機構のコラムを読む限り、日本での導入は簡単ではなさそうです。
[出典]
◇ Pilling, D. (2008, Jan 21 ). Japan ‘should adopt European labour model’. Financial Times. Retrieved March 10, 2008 from
http://www.ft.com/cms/s/0/
c44cfd9e-c7ac-11dc-a0b4-0000779fd2ac,dwp_uuid=
70662e7c-3027-11da-ba9f-00000e2511c8.html
英米のパラサイトシングル
日本には相互依存の文化があるのに対し、欧米には自立の文化がある。このため、そこそこの年齢の若者が親と一緒に過ごすなんてことは欧米では考えられない。欧米にひきこもり問題がないのもそのため(ただ、若年ホームレスは多い?)と私は思い込んでいました。しかし、これはとんだ心得違いだったようです。英米では「ブーメラン世代」(Boomerang Generation)といって、大学を卒業後、親元にブーメランのごとく戻って来て、働きながらも親に経済的に頼る若者が増えているそうです。英米のパラサイトシングルといったところでしょうか。
私がブーメラン世代のことを知ったのは、先週・先々週に放送されたNHKラジオ「ビジネス英会話」を聞いたのがきっかけでした。その後、インターネットでニュース関連のサイトを検索したところ、USATODAY や Washington Post、Financial Times や Guardian といったアメリカやイギリスの新聞社のサイトが数多くヒットしたので、なるほどこれは間違いなさそうだと納得したわけです。
ブーメラン世代がなぜ増加したかというと、若者に自立するだけの経済的余裕がなくなったからというのがオーソドックスな説明です。特にアメリカでは、大学の学費の高騰が深刻な問題になっていると聞きます。例えば、多額のローンを抱えたまま大学を卒業し、少しでも生活費を節約してローンの返済にあてるべく、親と同居の道を選ぶわけです。そして、それに同意する親もいるわけです。
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一方、違った見方をする研究者もいます。スタンフォード大学の Michael Rosenfeld 准教授(右の本の著者)がアメリカの国勢調査資料を1880年まで遡って調べたのですが、より広い歴史的な観点で見ると、ブーメランの増加はとるに足りないものと主張しています。[親と離れて暮らす 20-29歳の独身者の割合]
1880年 19%
1950年 11%
2005年 41%
[親と一緒に暮らす 20-29歳の独身者の割合]
2000年 男42% 女36%
2005年 男46% 女39%
それにしても、アメリカでは、親と離れて暮らす若者はどうやら戦後に増えたようですね。2000年でも親元に戻る若者が40%前後いて、若者の親との同居はアメリカにおいても決して珍しくないことが分かります。なにはともあれ、私は認識不足でした…。
[数字の出典]
Jayson, S., (2007, Mar 13). Analysis: 'Boomerang' generation mostly hype. USATODAY. Retrieved March 3, 2008 from
http://www.usatoday.com/news/nation/
2007-03-13-analysis-boomerang_n.htm
グローバル化する就労支援ビジネス
政府に任せると、役所が予算を必要以上に増やそうとしたり、利益団体の圧力があったり、既得権益を政治的に守ろうという動きが出たりして、必要以上にお金(税金)が投入され、経済資源の無駄遣いにつながる恐れがあります(そういえば、「ニート利権」という言葉がありますね)。民間企業に任せ、市場の資源配分機能を活用すると、このような弊害はなくなります。
もっとも、市場の資源配分機能にも限界があります。特に公共的な性格を持つ財・サービスの配分には向きません。民営化というのはなかなか難しいものです。
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"welfare-to-work" は、「福祉から労働へ」と訳されます。働けない人を福祉漬けにするのではなく、できるだけ自立への後押しをしようという、イギリスなどで有名なスローガンです。このやり方を間違えると、昨年北九州市で起きた餓死事件のような悲劇が起るのでしょうが、時代の流れだと思います。
イギリスの経済紙 Financial Times(電子版)の 27日のコラム "Jobless multinationals: welfare-to-work is becoming a globalised business" という記事を一生懸命読んでいました(英語苦手です)。タイトル通り、「福祉から労働へ」がグローバルビジネスになっているという記事です。
「福祉から労働へ」という基本的考え方に基づく就労支援は国際的に民営化が進んでいるようで、特にオーストラリアなどはその代表だそうです。そういえば、日本でもハローワークの市場化テストが行われていました(ですが、民間企業の方がうまくいっていなかったと報道されていたような…)。
記事によると、就労支援ビジネスでも国境を越えた企業の事業活動、買収などが行われているようです。ですが、この記事では日本の企業は出てきませんでした。日本はこういう流れとは無関係だからなのか、それとも何らかの理由で取材の対象外になったからのか、その理由は私には分かりません。記事の中で出てきた Maximus や Rescare、A4e といった企業について調べてみましたが、HPを見る限り、日本では事業展開していないようです。
記事の中で、"work-first" "work first" という言葉が出てきます。失業者に職業訓練を受けさせても、たいていお金がかかるし成功しないので、とにかく何かの仕事に就かせる、ということだそうです。考えさせられます。





